"lang" { "Language" "japanese" "Tokens" { "npc_dota_hero_antimage_bio" "王国の下層域に侵略者の波が次々と押し寄せる中、タースタークリの僧たちは山上の僧院から下の岩だらけの谷を見ていた。修行のためだけでなく実利的な理由により、日常の争いから隔離された僧院には神も魔術の要素もない瞑想だけがあった。そこへ、亡神の軍勢が災いの勅令を携えてやってくる。その目的は、地場の信仰をすべて有害極まりない亡神の空哲学に変えるためであった。千年もの間、争いと血しかなかった地を故郷とする軍団は、無数の戦死者を骨だけでなくその魂までも砕き、タースタークリへと差し向けた。僧院が持ちこたえたのは、かろうじて二週間ほどであった。というのも深い瞑想を解いたごくわずかな僧ですら、侵略は修行を邪魔するために送られた悪鬼の幻想に過ぎない、と信じ込んだのだ。彼らは結局、絹の座布団の上で最期を迎えた。最終的に生き残ったのは、知恵の探求のため僧院を訪れたものの、まだ僧侶としては認められていない巡礼者の若者たった一人だけだった。以前、自分が茶やイラクサを進上した僧たちが惨殺され、さらに蘇って亡神の教団に加わっていく様を、彼は慄然として見守った。タースタークリの極秘経典をいくつか持ち出し、彼は比較的安全な場所へと逃げた。亡神の魔術の使い手だけでなく、魔術の存在そのものを終わらせることを誓って。 " "npc_dota_hero_queenofpain_bio" "エルゼの法王は痛み――それも禁断の痛みへの欲求を抱いていた。平凡な政治家であれば単に浅はかな欲求とみなされるだろう。しかし、君主という地位につきながらその欲を満たそうとするのは王の権威そのものを危険にさらすことであった。したがって、彼は地下牢獄に多くの悪魔学者を閉じ込めると、苦痛を与えてくれるサキュバスを召喚し、王との専属契約を結ばせられた者を解放してやると言い放った。アカーシャという名の生物が召喚され、彼女が王に極上の苦痛をもたらした。王はアカーシャを秘密の女王と呼び、空き時間のすべてを女王から与えられる痛みに費やすようになり… ついには、彼女からしか得られない痛みの快楽を追求するために全責任を放棄するに至った。クイーン・オブ・ペインは王を死の淵へ連れて行くことも可能であったが、ルーンの契約により彼を生かし続けなければなかった。最終的に、王の怠慢が反乱を引き起こす。王は部屋から引きずり出され、召喚塔から投げ落とされた。死の瞬間、クイーン・オブ・ペインは契約を解かれて自由の身となり世界に放たれた。これからは気の向くままに誰にでも苦痛を与えられるのだ。" "npc_dota_hero_lina_bio" "スレイヤーのリナと、その妹クリスタルメイデンのライライのライバル関係は、二人が喧嘩ばかりの子ども時代を一緒に過ごした温暖な地では語り草になっていた。ライライがあどけなく純真であった一方で、燃えるような情熱を才気と狡猾さによって制御していたリナのほうが、常に優位であった。両親は折り合いの悪い子どもたちに業を煮やしていた。一家は、あるときは炎で、その次は氷で屋敷を失い、と半ダースもの屋敷を移り住む羽目になったが、両親はついに、子どもたちを引き離してしまえば簡単なのだと悟った。年長であるからという理由で、リナははるか南へ送られ、灼熱のミスルール砂漠に住む寛容な叔母のもとで暮らすことになった。砂漠の気候は火を操るスレイヤーにとっては快適この上ないものであった。彼女がやって来たことで、のどかに暮らしていた当地の人々も大きな影響を受けた。リナに求婚しようとした男たちは指を、あるいは眉を焦がされて追い払われ、ことごとく振られた。誇り高く自信に満ちたリナの炎は、何者にも鎮められることはない。" "npc_dota_hero_mirana_bio" "王家に生まれ、次期太陽王となるはずの王女であったミラーナは、あらゆる領土と地位を放棄し、月の女神セレメネに仕えて身を捧げることを決めた。以来、月の王女として知られるようになった彼女は、女神の領地内にある銀の池から大胆にも尊い月の蓮を盗みだそうとする輩を探すため、神聖な銀夜の森を見回っている。巨大な猫型の使い魔にまたがる彼女は沈着冷静で誇り高く、恐れを知らない。また、月の満ち欠けや大いなる星座の循環と波長を合わせて活動する。先端に月の鉱石の砕片を付けた彼女の弓からは、月の力を帯びた光の矢が放たれる。" "npc_dota_hero_life_stealer_bio" "デヴァルクの地下牢では、枷をかけられ復讐に燃える魔術師が脱出の計画を練っていた。同じ房にはナイクスという名の盗賊がいて、訳の分からないことをつぶやいている。この盗賊はヴァイル評議会により長命の呪いをかけられたうえで、窃盗と詐欺の罪で終身刑となっている。刑期の長さは計り知れない。長い時間はナイクスの鎖だけでなく、精神をも腐食させた。今では投獄される前の記憶はなく、脱出を夢見ることもない。

魔術師はナイクスを計画に最適な「器」になるだろうと考え、体内侵入の魔術をもってナイクスの体に自分の生命力を注ぎ込んだ。ナイクスの体をおとりにして暴れさせ、その隙に自分の体に戻って気づかれぬうちにそっと逃げ出そうという計画だ。だが、ナイクスの体に侵入した魔術師の精神はそこに渦巻く狂気に囚われる。彼の計画は吹き飛び、その意思は打ち砕かれた。突然、活気あふれる生命力を体に受け入れたナイクスは狂気の悪夢から目覚め、頭蓋に満ちる体のない声に従った。声はただ一つのことを告げていた。「脱出せよ」

こうしてライフスティーラーは生まれた。この怪物は自身の意識を地下牢の衛兵や兵士に侵入させることで、錠を開けさせ、仲間を倒させ、彼らの命を貪りながら自由への道を開いた。ライフスティーラーの手足には今でも壊れた枷がぶら下がっている。それは何者も自分を囚えることはできないという警告であり、一方で精神の内側では今も囚われの身であることを示している。一つの体に二つの精神――邪悪で狡猾な無名の怪物と、彼が見せかけの服従を示す声の主が共存しているのだ。" "npc_dota_hero_furion_bio" "森の女神ヴェロディシアが大地に緑を敷き詰め、螺旋状に巻かれた魂を種子に埋め込み、絡み合う水流を岩の奥から導き出し、育ちゆくものたちへ細心の注意を払うことを太陽に誓わせた時、彼女は自身に最期の時が来たことに気づいた。彼女が運命を刻み込んだ種子から育った一枚の葉のように、ヴェロディシアは自分の夢の果実を見ることなく散る定めであった。世界を取り残していかなければならないことに彼女は苦しんだ。多くの芽がまだ土の中にある。小さな芽は繊細で、あらゆる危害に対して脆弱なのに。彼女は種袋の中に、種まきの時に見落としていた最後の種を見つけた。その種に一言つぶやくとそれを飲み込み、ヴェロディシアは息絶えた。長い冬の間に、彼女の巨大な体は分解され、腐植土となって春には若木に栄養を与えた。春分の朝、森が目を覚ます前に、あの最後の種が熟し、一瞬にして破裂した。そこから現れたのはネイチャープロフェットである。彼は生い茂る葉に身を包み、強く賢く、ヴェロディシアの力を受け継いでいる。それは、守るべき緑の地を予見し、彼を味方と呼べる幸運な者を見分ける力だ。" "npc_dota_hero_windrunner_bio" "西の森がその秘密を漏らすことはない。秘密の一つが、弓の達人で風の神の寵愛を受けるライラレイだ。今ではウィンドレンジャーと呼ばれているライラレイの家族は、彼女が生まれた夜、嵐にあって全滅した。家は強風に吹かれて崩れ、家財は全て風塵と化した。死と破壊の残骸の中で生き残ったのは、生まれたばかりのライラレイだけだった。嵐の後の静けさの中で、風自身が草の中で泣く幸運な赤ん坊に気づく。気の毒に思った風は、赤ん坊を空まで運び上げ、近隣の町である家の玄関先にそっと子どもを置いた。年月が経っても、風は時折その場所に戻って子どもが成長し技術を身につけるのを遠くから見守った。長年の訓練の結果、ウィンドレンジャーは的を逃さず射止める腕前にまでなった。その動く速さはまるで風が常に彼女の背中を押しているようにも思える。疾風のような射撃で彼女は敵を打ちのめし、ほとんど自然の力そのものとなっている。" "npc_dota_hero_lion_bio" "かつて、魔術の伝統であるデーモンウィッチのグランドマスターであったライオンは、光と正義の側に立ち戦ったことで、仲間内で名を上げた。しかし賛辞は失われる。強大な力をさらに上回る大望を抱いた彼は、悪魔に誘われてその魂と引き換えに地位を得、悪の道に足を踏み入れることとなった。魂をすり減らせるほどのおぞましい悪事に手を染めたライオンだったが、悪魔は彼を裏切った。彼の敵とより条件の良い契約を結んだのだ。怒りに狂ったライオンは悪魔を地獄まで追いかけていき、その四肢を引き裂いて殺した。ちぎった悪魔の手を自分の体に縫い付けたのだが、それは代償を伴う肉体改造であった。次第にライオンの体は変形し、いつしか元の面影は完全に失われてしまった。彼は地獄から這い上がり、憤怒の化身として、自分を師匠として慕っていた者までも殺すだけでなく、自分を礼賛した故郷さえも破壊した。今、彼はデーモンウィッチの伝統を一人で実践して生きている。信奉者や生徒として近づいてくるものは容赦なくマナを吸い取られ、微かな風と共にその命を奪われるだろう。" "npc_dota_hero_vengefulspirit_bio" "スカイラスはどんなに満たされていたとしても不機嫌な生物であることに変わりなく、些細な侮辱に対しても当然のように復讐しようとする傾向がある。しかし、ヴェンジフルスピリットは復讐そのものだ。高慢で残忍なスカイラス族の子であるシェンデルザーレは、ガストリ・アイリーの王位を継ぐはずだったが、妹の裏切りによって継承権を失なうこととなった。暗殺者の罠にかかったシェンデルザーレは、自由のために自身の翼を犠牲にした。それは究極の屈辱、すなわち徒歩で逃げることを意味した。翼の折れたシェンデルザーレをスカイラス族が統治者として認めないだろうことは分かっていた。飛べなければ、ガストリ・アイリーの一番高い場所にいる妹にも手出しができない。シェンデルザーレは飛べないスカイラスとして不完全な状態で生きることを望まず、この世の力を超えた復讐を欲した。そこで、女神スクリオウクと取引をする。壊れた体を捨てて復讐心に支配された不滅の精神エネルギーへと形を変えることで、彼女は物質界に存在するものに大きなダメージを与えられる存在となった。飛べないまま永遠を過ごそうとも、必ず復讐を果たすだろう。" "npc_dota_hero_witch_doctor_bio" "足を引きずって歩く細長い体――いびつな四肢と顔立ちに、奇妙な歩き方で、彼は戦場を休みなく縦横に移動する。自身の才能を最も発揮でき、相手に最高のダメージを与えられる一番の弱点を探すためだ。壊れているのか、過って形成されたのかは定かではないが、彼のゆがんだ体格に備わった力には誰も疑いを持たない。ウィッチドクターのザルヴァッコが前進しながら長い杖で地面を叩くと、呪術や魔術、まじないなどの恐ろしい武器が展開される。アークトゥラ島の高地で数回の生涯をかけて習得、完成された魔術の知識が一つとなり、今、極限の精度をもって敵に放たれる。ザルヴァッコは最高の仲間にも、最悪の敵にもなり得るだろう。味方には回復を、逆らう者には破壊をもたらすのがウィッチドクターだ。" "npc_dota_hero_leshrac_bio" "レシュラック、 別名トーメンテッドソウル(苦悩する魂)は、自然の中心から切り離された境界の存在である。その半分はある次元に、もう半分は別の次元に存在する。鋭い知性によって、彼はあらゆる創造物の中にある苦しいほどの恐怖を一瞬たりとも無視できない。かつて存在の意義を追い求めた偉大な哲学者は、呪われたクロノプティク・クリスタルの性質を解明しようと試み、その過程で忌まわしい神秘の力によって永遠に姿を変えられてしまった。彼の悟りの深奥は闇に包まれ、その傲慢さが放つ気まぐれな光よってわずかに照らされるばかりである。 他の元素的存在と同じく、彼は自然と完全に調和しているが、彼が調和を果たした自然はぞっとするほど下劣なものだ。彼だけが現実の邪悪さを見通している。そして彼は、博愛を実践する者へ宇宙は特別な褒美を与えるのだと信じている者たちを蔑んでいる。" "npc_dota_hero_juggernaut_bio" "仮面の下に隠されたユルネロ・ザ・ジャガーノートの素顔を見た者はいない。彼が顔を持っているということさえ、仮定にすぎない。堕落した主に挑んだため、ユルネロは太古の島、マスク島から追放された。しかし、その処分が彼の命を救うことになった。彼の追放直後、復讐の魔法が放たれた夜に、島は波間に消えた。こうして、古より伝わる儀式と剣術によるジャガーノートの伝統を継ぐ者は彼だけとなる。最後の継承者となったユルネロの自信と勇気は、終わりなき稽古の賜物だ。編み出した剣さばきは、彼が自身の限界まで挑戦してきたことを物語っている。しかし、彼の真意はその表情と同じく読めない。二度もすべてを失った英雄は、まるで勝利は必然の結果であるかのように戦う。 " "npc_dota_hero_pudge_bio" "クォイッジの遥か南に位置する終わりなき殺戮の原野では、でっぷりとした男が夜通し働いていた。手足を切断し、臓物を抜き出し、死者たちのそれらを積み上げて、戦場は夜明けまでにきれいさっぱり片付くだろう。この呪われた領域においては何者も腐敗しないし分解されない。つまり、どれだけ深く墓を掘っても、死体が元の土に還ることはない。屍骸を食む鳥類は、彼に食事を細かく切り分けてもらおうと集まってくる。ブッチャーのパッジは、使えば使うほど鋭さを増すその刃の技術に磨きをかける。シュッ、シュッ、ザクッ。骨から肉が落ち、腱と靭帯は湿った紙のように簡単に切り離される。死体の解体は昔からパッジの好きな作業だったが、年月と共に、彼はその副産物をも好むようになっていた。こちらで筋肉を一かけらつまみ、あちらで滴る血をすすり… パッジがまるでぼろ切れに嚙みつく犬のように、死体の胴体に深く顎を沈めるようになるまで、そう時間はかからなかった。死神を恐れぬ者でさえ、パッジを恐れるという。" "npc_dota_hero_bane_bio" "神々が悪夢を見るのはベイン・エレメンタル の仕業である。アトロポスという名でも知られるベインは、女神ニクターシャの真夜中の恐怖から生まれた。眠りでも押さえつけられぬほど強い恐怖の力によって、彼は女神のまどろみから身を起こし。女神の尽きせぬ命を糧とし、その墨のような血を盗んで実体の無い姿を得たのだった。ベインは恐怖の神髄だ。その声が聞こえる人間には隠しておきたい秘密を耳元で囁き、あらゆるヒーローの心に閉じ込められた恐怖を呼び覚ます。夢の中でなくても避けられない。彼の漆黒の血液はしたたり続け、タールのように敵を悪夢の中に閉じ込める。ベインを見ただけで、どのヒーローも必ず暗闇を恐れるのだ。" "npc_dota_hero_earthshaker_bio" "ゴーレムやガーゴイルと同じく、アースシェイカーは土から生まれ、地上を自由に動き回る存在となった。ゴーレムなどと違うのは、彼は自分の意志で自らを作り出した点で、そこに仕えるべき主人はいない。石に深く刻まれたしわに包まれ、絶え間なきまどろみの中にあって、彼は自分の上に命が漂っていることに気づいた。「もっと知りたい…」

地震が続いた時期、ニシャイ山で起きた地震がなだれを起こした。それは川の流れを変え、浅い谷は底の見えない亀裂になった。地面の揺れがようやく収まったとき、アースシェイカーは舞い落ちる塵の中に立ち上がった。彼が放り投げた大岩は軽い毛布に見えるほどであった。

彼は自らの姿を実在の獣に似せ、ライゴール・ストーンフーフと名乗ることにした。血を流せるようになったし、呼吸もできる。つまり、死ぬこともあるということだ。それでも、その魂は土と共にある。魔法のトーテムに込めた力は消えることがない。彼が塵に戻るとき、大地は彼を帰還した放蕩息子として迎え入れるだろう。" "npc_dota_hero_sand_king_bio" "シンティラント荒野の砂には命があり知覚もある。広大な砂漠は自身に語りかけ、このように大いなる存在だけが考え得ることに思考を巡らす。しかし、限界を持つ者と意思疎通する際には、幾分かの砂を使って姿を作り出し、狡猾なカルダンの魔人が仕立てた魔法の兜に身を包む。「砂の魂」を意味するクリクサリスと名乗っているが、他からはサンドキングと呼ばれている。その姿は大型の蜘蛛のようだ。シンティラント荒野のどこにでも生息する小型の蜘蛛を模したもので、彼の凶暴性を表してもいる。サンドキングは守護者かつ戦士であると同時に大使でもあり、彼に命を与えた果てしない砂漠とは切っても切れない存在なのである。" "npc_dota_hero_nevermore_bio" "ネヴァーモア、別名シャドウフィーンドは詩人の魂を持っているという。それも一つではなく、何千もの魂を、だ。永きにわたって、彼は詩人だけでなく、司祭、皇帝、物乞い、奴隷、哲学者、犯罪者と収集の対象を広げ、当然のようにヒーローの魂も集めるようになった。彼から逃れられる魂など存在しない。集めてどうするのかは謎である。星界の岩陰から出てくるウツボのごとくネヴァーモアが手を伸ばす深淵の底を覗いた者はいない。魂を一つずつ貪るのだろうか。不気味な寺院の神殿に飾るのだろうか。それとも、降霊術のために塩漬けにするのだろうか。彼は単なる操り人形で、次元の亀裂から悪魔の人形使いに操られているだけなのだろうか。その邪悪で強烈な闇の霊気を、正常な精神の者が理解するのは到底不可能だ。もちろん、盗まれた魂の行方を知る方法がなくはない。彼のコレクションに加わればよいのだ。そう、ネヴァーモアを待てばよい。" "npc_dota_hero_sven_bio" "スヴェンはあるパリド・メラントを母に持つヴィジルナイトの私生児で、シェイドショア旧跡で育てられた。父親は ヴィジル法典に背いた罪で処刑され、母親は野生的な自種族からのけ者にされていた。このような境遇から、スヴェンは名誉とは社会秩序の中には存在せず、自身の中にのみあると信じるようになった。長く苦しんだ末に息絶えた母を看取った後、彼は自身の素性を明かすことなく、ヴィジルナイト見習いに志願した。13年間、彼は父のいた騎士団で学び、彼を忌まわしき存在とみなす厳格な規律を修得した。宣誓をするはずだった日、スヴェンはアウトキャストブレードを奪うとセイクリッドヘルムを打ち砕き、法典をヴィジルの聖なる炎に投げ入れて焼いた。ヴィジルの城から去り永遠の世捨て人となった彼が従うのは、自らの信念のみである。いまだ騎士ではあると言えようが… ローグナイト(無頼の騎士)と呼ぶ方が正しいだろう。彼が従うのはおのれのみなのだから。" "npc_dota_hero_phantom_assassin_bio" "「暗殺は自然界における聖なる生業」と信じる組織、シスターズ・オブ・ベールは占術を通して、養育すべき子どもたちを選定する。選定のために行われるのは、瞑想と神託だ。シスターズが他者から依頼を受けることはなく、政治的な理由や報酬目当てに標的を追うことは無いらしい。暗殺には関係性や意図が見えず、まったくの無作為に見える。権力者が消される確率と農民や井戸掘りがそうなる確率には違いが無い。そこにある規則性は、彼女らにしか分からないのだ。犠牲者は生贄として扱われ、栄誉ある死と称えられる。構成員は組織の教えのみに従い自己を持たないため、ファントム・アサシンたちの任務は組織の者なら誰でも遂行可能である。構成員数は測り知れない。多いかもしれないし、少ないのかも知れない。ファントムベールの下の素顔を知る者など存在しない。しかしたった一人だけ、その声を聞き取れる範囲に誰もいないときに、ベールを微かにずらし、発することを禁じられた自身の名前をそっと呟く者がいる。その名をモートレッドという。" "npc_dota_hero_skeleton_king_bio" "長大な年月をかけて、オスタリオン王は敵の亡骸の上に王国を作り上げた。それは永遠を約束されたかに見える君主ならではの、果てしない時間をかけた偏執的な事業であった。彼は、宮殿の塔を築く限り死ぬことはないと信じていた。しかし、彼は思い違いを悟ることになる……骨それ自体は消えうるのだ。肉体への不信感ゆえ、彼は永久に治世を伸ばす方法を探し求め、最終的に、死亡時に闇の魂が放つ純粋な霊力であるレイスエネルギーの追求に落ち着いた。レイスエッセンスを摂り込むことで、自我そのものの輝きを持つ不滅の肉体ができると考えた彼は、「亡霊の夜」 として知られる千年至の夜、変身の儀を執り行い、不死の願いを満たせるだけの魂を収穫するよう臣民に強いた。どれだけの数の勇者が死んだのか、知るものはない。生存者はただ一人、翌朝太陽と共に目を覚ますレイスキングさえいればよかったのだ。現在、彼が輝ける玉座で過ごすことはほとんどなく、死後も続く忠誠を求め、抜き放った剣を手に闊歩している。 " "npc_dota_hero_drow_ranger_bio" "ドラウレンジャーの本当の名はトラクセクスといい、背が低く、トロールのような醜い見た目のドラウによく合う名である。だが、トラクセクス自身はドラウではない。旅人だった彼女の両親の所属していたキャラバンは野盗に襲われた。彼らによる罪のない人々への虐殺は、物静かなドラウの怒りを買ったのだった。

戦闘が終わった時、あるドラウが壊れた荷車に身を潜めていた小さな少女を見つけ、捨ておくわけにはいかないと連れ帰った。子どもながらにトラクセクスはドラウが重んじる技――人目を忍び静粛かつ精妙に行動する技に天賦の才があることを見せた。体格は違うにせよ、心は完全にドラウの子どもと変わらない彼女は、本当の故郷に帰ってきたようなものだった。だが、成長するにつれ彼女の背は家族をはるかに追い抜き、自分を醜いと思うようになった。なめらかで均整のとれた体は、いぼや粗野なひげとは無縁だった。

自分を育てた部族と別れ、彼女は森の中で孤独に生きることにした。道に迷った旅人が語るには、あり得ないほど美しいレンジャーが木々の奥からこちらを見ており、近づく間もなく幻のように姿を消すのだという。しなやかで身を隠すのが上手く、氷のように美しいトラクセクスは静かな霧のごとく動く。囁き声のように聞こえるその音は、彼女の矢が敵の心臓めがけて飛ぶ音なのだ。 " "npc_dota_hero_morphling_bio" "長い間、その彗星はひっそりと軌道にあった。遠く離れた太陽の容赦のない引力に囚われたその巨大な氷の塊は、星々の狭間で漆黒の中を疾走し、その闇によって奇妙な形になっていた。古代ヴロイの戦いの前夜、夜空を突き抜けて赤々と燃えながら、地上に落下した。両陣営からは前兆だと思われていた。狭い河川を挟んで二つの軍がまさにぶつかりあおうとしたその時、氷の球は閃光と共に沸騰し、溶けた。氷結状態から解放され、モーフリングは争いの真っただ中に生まれた。気まぐれで自由な、海の潮汐を起こす元素の力を持つ存在だ。彼はそのまま戦に加わった。直感に従って川を最初に渡ろうとした将軍の姿となり、その将軍を打ちのめして殺した。さまざまな戦士たちがぶつかり合う中、モーフリングは次から次に姿を変えては、模倣した生物の戦い方を取り入れた。歩兵から射手に、射手から騎手に、最後の兵士が倒れるその時まで彼は全ての役を演じた。この戦いの終わりこそがモーフリングの始まりであった。" "npc_dota_hero_bloodseeker_bio" "ブラッドシーカーのストリグヴィルは儀式によって認められたハンター「フレイドツインズの猟犬」で、霧に包まれたシャカトカトル山地から血を求めて送り出された。フレイドワンを満たし、鎮めるには大量の血液が必要だ。高地の僧らがそれをなだめることができなければ、山地の民の血が流れる事態になるだろう。ストリグヴィルは殺戮を求めて旅に出た。流れ出させた血の生気は、ストリグヴィルの武器と防具に描かれた聖なる模様を通じてフレイドツインズに即座に流れ込む。長年そうしているうちに、ストリグヴィルは残忍な猟犬のエネルギーを体現する者となった。戦場ではさながら獰猛なジャッカルのようだ。血の雨が降る残虐行為の中では、ブラッドシーカーの仮面の下に、猟犬に直接憑りついたフレイドたちの顔が見えることがあるという。" "npc_dota_hero_axe_bio" "レッドミスト軍の歩兵であったモーグル・カーンは将軍の座を狙っていた。幾度にもわたる戦で血なまぐさい戦果を挙げ、彼は自身の価値を証明してきた。自分より上位の者の首をはねることを決して恐れない彼の昇任はそう難しくなかった。7年にわたるサウザンドタルン戦役では、はなばなしい大虐殺によって手柄を立て、名声を更に轟かせたが、一方で戦友の数は確実に減少していた。圧倒的な勝利を収めた日の夜、彼は自分がレッドミスト軍の新たな将軍であると宣言し、最高位「アックス」を自らに授けた。しかし、彼の隊に兵はもういない。もちろん、多くは戦場で命を落としたのだが、アックスの刃に倒れた者の数も膨大であった。言うまでもなく、大部分の兵士がアックスの指揮下に入るのを避けるようになった。しかし、彼はその事実を気にも留めない。経験上、たった1人の軍が至高であると知っているのだ。" "npc_dota_hero_phantom_lancer_bio" "人里離れた村ポールでは、王国の中心部で激しい争いが起きているなど知る由もなかった。村の生活で大切なことは、静かな銛突き漁と家族の食事だけだった。だが、戦禍は否応なしに村を巻き込む。一介の槍使いであったアズレイスも、家々の前を通過する頑健な徴集兵の一団に加わり、王国と故郷の人々に平和をもたらすことを誓った。ドレッドメーガス・ヴォーンに対する最後の攻撃で仲間たちとともに前線に配置されたアズレイスだったが、この戦いは仲間たちに甚大な損害をもたらした。砦に攻勢をかけた突撃部隊の中で、残ったのはアズレイスただ一人だった。そして、彼だけが砦に侵入したのだった。

仲間たちを無残に殺されたことに激怒し、神経の研ぎ澄まされたアズレイスは、魔術師の仕掛けた危険な罠を次々とくぐり抜け、番兵たちを打ち払った。やがて、このありふれた漁師は砦の塔にあるヴォーンの私室にたどり着く。二人は槍と杖を交わして夜通し戦い続けた。混沌とした戦いの中、耳をつんざくほどの声を上げて最後に敵を貫いたのはアズレイスだった。だが、魔術師はあっさりと倒れはしなかった。彼は体を霧散させて無数の光のかけらになり、その力のこもったかけらでアズレイスを貫いた。舞い上がった粉塵が落ち着き、視界がはっきりとし始めたとき、アズレイスは自分が大勢の仲間に囲まれていることに気づいた。誰もが自分と同じ格好で、同じ武器を持ち、同じ考えを持っているのが感じられた。味方の軍勢が向かっていることに気づき、この幻影が消えてくれるようアズレイスが願うと、それは一つひとつ無になり消えた。兵士たちが魔術師の私室に到着したときに見たのは、魔術師を倒した英雄の姿だった。兵士たちがその体に近づくと、アズレイスは消えてしまった。かの槍使いもすでに幻影となっていたのだ。" "npc_dota_hero_razor_bio" "アンダースケープには数々の象徴的な、力ある存在が住まうが、中でもライトニング・レヴナントのレイザーは最も恐れられている。光の鞭を手に彼は「狭き迷宮」を巡回する。危険な小道が網目状に行き交うその迷宮では、内に秘める知性、狡猾さ、粘り強さに応じて死者の魂が選別される。迷宮の上をただよいながら、レイザーは戸惑っている魂を見下ろす。そして痛烈な電撃を与えて魂を罰し、輝く出口あるいは底なしの暗い穴という二つの運命への決定を急かすのだ。レイザーは支配力を体現する永遠の存在であり、力の行使においては理論的で冷徹だ。しかし、彼の漂わせる尊大な態度からは、魂をあざけることを喜んでいるのが伝わってくる。" "npc_dota_hero_storm_spirit_bio" "ストームスピリットは文字どおり自然の猛威――風と天候の力が人間の姿に閉じ込められた存在である。それに、騒がしく、陽気で誰にも抑えることはできない! お気に入りのおじのように楽しく、どんな場面でも全力なのだ。しかし、昔からそうだったわけではない。ある悲劇が彼をそうした。遠い昔、ウェイリング山地の向こうにある平原では、干ばつと飢饉によって沢山の人々が餓え苦しんでいた。サンダーケグという名の元素使いが、考えなしに、禁じられた呪文で嵐の精を召喚して雨を降らせるよう頼んだ。雷神とも呼ばれるストームセレスティアルは人間の図々しさに激怒し、強風と洪水でその土地をすっかり洗い流し、荒廃させてしまった。サンダーケグは雷神に敵うはずもなかったが、決死の呪文によって自分と雷神の二つの運命を融合させ、雷神を自らの体内に閉じ込めた。サンダーケグの底抜けの明るさと雷神の狂わんばかりの霊力が融合された。こうして、肉体を持って地上を歩き回る陽気なセレスティアル、雷神サンダーケグが誕生したのだった。 " "npc_dota_hero_crystal_maiden_bio" "暖かな地に生まれ、気性の激しい姉リナと共に育った クリスタルメイデンの ライライは、生まれつき持つ氷との繋がりが自身の周りに問題を引き起こすことに気づいた。一休みしようと立ち寄った泉や山の川は次々に凍りつき、熟した作物は霜でだめになり、実りの時期の果樹園は氷の迷宮と化して砕け散った。姉妹に業を煮やした両親はリナを赤道近くに送り出し、ライライを極寒の北の地アイスラックへ養子に出した。彼女を引き取ったのは、ブルーハート氷河の頂きで隠遁生活を送る氷の魔術師だ。長い修業の後、魔術師はもう教えることは何もないと告げて彼女に魔術師の座を譲り、千年の眠りにつくため氷河の中へ下りていった。以降も彼女の氷を操る力は高まり続けている。その腕前に並ぶ者はもう無い。" "npc_dota_hero_kunkka_bio" "強大なクラッドの海軍で提督を務めるクンカは、カタラクトのデーモンが人間の土地を一斉に襲撃したとき、故郷の島々を防衛する任を負っていた。数年にわたる小競り合いとやがて強度を増すようになった攻撃の後、獰猛なデーモンの艦隊は「わななきの島」に迫った。すてばちになったクラッドのスーサイドメイジたちは、自軍の艦隊を守るために、祖先の精霊を無数に召喚する究極の儀式を行う。これにより彼らはデーモンに対してかろうじて形勢を逆転させることができたのだった。

悪魔たちが自軍の船を一つまた一つと沈めていくのを見ていたクンカだが、祖霊魔術によって敵の船が消えていくことに満足していた。しかし悪魔と人間、祖霊がぶつかり合い、戦闘が最大限の激しさに達したとき、海の底で四番目の勢力が目覚めた。わずかに残っていた船の周りで波が噴き上がり、渦中から触手神メイルローンが現れたのだ。その触手は船の間をうねり、人間か悪魔かを問わず海に沈めていった。海水と風が混じり合い、あたりは混沌とした。

この嵐のるつぼの中で起きたことを正しく説明できる者はいないだろう。カタラクトの船は轟音を立てて虚空に消え、悪魔たちは逃げ出した。提督としてのクンカに残されたのはたった1隻の幻の船で、それは破壊の最後の瞬間を永遠に繰り返している。その瞬間にクンカが死んだのかどうかすら確かではない。メイルローンを召喚したタイドハンターにさえも、はっきりとは分からないのだ。" "npc_dota_hero_warlock_bio" "ウルティミール学術院の主任学芸員であり神秘文書の調達部門長であるデムノック・ラニックは、遺失した希少な禁書を精力的に追跡してきた。伝説の文書が残されている可能性ありと聞き及べば、呪われた神殿であろうと危険な大洞窟であろうと、生命の危機が彼を思いとどまらせることはなかった。しかし、調査によって土地の主たちの怒り買うことが頻繁にあったため、彼は魔術の取得が必要であるとの結論に至る。揺籃期の書物捜索と同じ執念を持って魔術を学んだデムノックは、並の者であれば見習い期間を終えるほどの時間で学術院最高の魔術師となった。ほとんど後からの思い付きのようなものだったが、彼はドレッドウッドから杖を彫り出し、アウターヘルから囚われの精霊を召喚して宿すことにした。失われた魔術書をすべて手に入れるその日を夢見ながら、彼は黒魔術全書の執筆を始めた。間違いなく、最高の教本になるだろう。" "npc_dota_hero_zuus_bio" "天界の主であり神々の父であるゼウスは、どのヒーローもやんちゃで反抗的な子どものように扱う。人間の女と彼の密会を数え切れないほど目撃した彼の妻である女神は、彼に最後通牒を突きつけた。「それほどまでに人間が好きならば、人間界に行き、人間になるがよい。これ以上裏切らないことを証明できるならば、神なる夫として帰ってくるがよい。さもなくば、おまえの創造物たちに囲まれて、死ぬがよい」。ゼウスは彼女の理論 (とその魔術) に反論できないことを悟り、提案を受け入れた。その後、限りある命より不死が好ましいことに気づいた彼は、それまでの不品行が嘘であったかのように態度を改めた。だが、永遠の命を持つ妻に自身の価値を証明するには、戦場で勝利を収め続けることが必要だ。" "npc_dota_hero_tiny_bio" "石の塊として生を受けたタイニーの起源は謎に包まれており、彼自身もその答えを探し続けている。今ではストーンジャイアントとなった彼だが、その前は何だったのだろうか? ゴーレムの折れたかかとの小片か、ガーゴイルの彫像を作る工房に落ちていた破片だろうか。あるいはガルトスの神託面のかけらかもしれない。強い好奇心に突き動かされ、彼は飽くことなく世界中を旅して、自身の起源、血筋、同族を探している。放浪するうちに、体重は増え、体も大きくなった。小石ならば風化させてしまう力はタイニーを成長させ続けるのだ。" "npc_dota_hero_puck_bio" "一見したところいたずら好きで、子どもっぽい性格に見えるパックだが、その裏には相容れない性質が潜んでいる。数十億年とも云われる寿命を持つフェアリードラゴンの幼形であるパックは、数千年を子供の姿で過ごす。パックが幼形であることは紛れもない事実であるが、いまある都市が廃墟となっていずれは塵になるまでの間、この姿が続くのだ。だから、パックの真意は分からない。ただ遊んでいるように見えても、実際のところ暗い目的を隠しているのかもしれない。いたずらへの飽くなき探究心は、パックの本性を如実に現している。" "npc_dota_hero_dazzle_bio" "デズン教団の侍祭が影司祭になるには、いくつかの儀式を行う必要がある。最後の儀式である影の儀は、陰惨なノスル界での巡礼の旅だ。予測のつかない土地での旅からは、すべての者が戻るとは限らない。戻っても、狂気に陥っていたり、奇妙な習癖を持つようになっていたりする者もいる。ノスル界に行くと、そこでの経験から誰もが変わってしまうのだ。

教化の必要に駆られたダズルは、この聖なる儀式を求めた者として部族の中でもっとも若かった。はじめ、教団は彼を若すぎると言って儀式に参加させることを拒んだが、ダズルは諦めなかった。頑固な若き侍祭に何か特別なものを感じた長老たちは、ダズルの求めに折れた。彼は霊薬を飲み、焚き火のそばに座る。その周りで部族の者たちが夜通し踊り続けた。

現実離れしたノスル界では、光と闇の性質が逆さまになっている。このため、光に属するダズルの優れた美しい癒しの力は、不届きな災いの力となる。また、邪な行いはまばゆい光の中でなされる。長老たちの直感はある意味では予言だった。ダズルは今まで誰も見たことのないような影司祭となり、癒しの力と破壊の力を併せ持って、旅から戻ったのだった。今ではその才を生かして、敵を打ち砕き、仲間を癒している。" "npc_dota_hero_rattletrap_bio" "ラトルトラップの遠い祖先をたどれば、スナイパーやティンカーと同じ祖先にいきつく。また、他のキーン族と同じく、彼も道具と知識で小柄な体を補っている。時計職人を祖父に持ち、彼もかつては弟子として学んでいたのだが、戦が山から下りてきてふもとの村々を蹂躙し、もはやそのような無垢な商いはできなくなってしまった。「お前は戦を生業とせよ」ラトルトラップの父は今際の際にそう言った。先祖代々暮らしてきた村が戦火でに焼かれ、煙を上げる廃墟となった時だった。

道具のせいにするのは腕の悪い職人だけである。ラトルトラップは決して言い訳をしなかった。廃墟となった村に父を埋葬すると、彼は自分を作り変えることにした。世界中で誰も見たことのないような、戦いのための機械になるのだ。次は決して不意を突かれまいと誓い、恵まれた才を利用して機械仕掛けの鎧を作った。他国の戦士など、この鎧を着けたラトルトラップに比べればブリキ缶にも等しかった。数々の道具を装備したラトルトラップは、ほとんど自動的ともいえる効率で奇襲と破壊を遂行できる、小柄ながら恐るべき戦士となった。機械化された彼は死の職人として不用心な者たちを始末し、この戦の時代に新しい夜明けをもたらす。そう、時代はクロックワークのものだ!" "npc_dota_hero_lich_bio" "生きていた頃(リッチと化す前)のエスリアン は破壊的な氷の力で人々を脅かし、王国全土を奴隷のごとく従えていた。彼の臣民はすてばちになった数人の魔術師の支援を受け、果敢にもエスリアンを奇襲することにした。彼らは魔術をかけた縄を武器にエスリアンを硬い重石に縛り付け、底なしと言われていた池に放り込んだのだ。しかし、底はあった。

1年ほど水の中を落ち続けたエスリアンは、水の湧きだし口に引っかかった。死んではいたが腐敗はしていなかった彼の体は、時を経てジオマンサーのアンヒルに発見される。彼は底なしと言われている黒ヶ淵池の伝説を確かめようと考えていた。深さを測るために垂らしたアンヒルの錘付き紐が、かの魔術師を縛る縄に絡みつく。紐を引き上げたアンヒルは予想外の釣果を手に入れた。この死体をアンデッドにすれば、池の中がどうなっているかを聞ける。そう考えた彼は死体の縄を解き、簡単な蘇生の術を施した。この頃にはエスリアンの子孫の敵さえもとうの昔に忘れ去られていたため、アンヒルの軽率な考えを諌める者はいなかった。しかし、彼は自分の判断の誤りにすぐに気づく。その時にはすでに、リッチとなったエスリアンが枷を投げ、アンヒルを飲み込んでいたのだった。" "npc_dota_hero_tidehunter_bio" "リヴァイアサンとも呼ばれるタイドハンターは、かつてサンクン諸島の戦士であったが、彼の原動力は種族のそれと同じくらい不可解だった。地上の者にとって海上交通の重要性は周知の事実であり、国々の衰退や繁栄は開放水域の支配如何にかかっている。一方、海底路の存在と、離散したメラント戦闘民族が絶え間ない小競り合いを繰り返して海底に居住地を拓いてきたことは、あまり知られていない。メラント族と人類の間に結ばれた危うい協定から、海底国家の広がりを垣間見ることが出来るが、彼らの政治はとても複雑で分かりにくい。政治的な対立にうんざりしたリヴァイアサンは、深海の神である触手神メイルローンだけに忠誠を誓って、独自の道を歩み始めた。彼は今、浅瀬を歩いて迷い込んでくる人間やメラントを探している。とりわけ見つけたいのは、宿敵である提督クンカだ。彼を敵視するに至った理由は、すでに深い海溝の中に消えてしまったのだが。" "npc_dota_hero_shadow_shaman_bio" "流血が丘に生まれたラスタはいつも腹をすかせた若者だったが、ある時旅の詐欺師に拾われた。年老いたその詐欺師は銅二片で未来を占った。三片で豚の去勢を、五片で子息の割礼を請け負った。また、ご馳走を振る舞われれば、シャーマンの衣装を身に着け、古びた本から呪文を唱え、客の敵に呪いをかけた。彼が拾った若者は、半分はヒルトロールのようで、もう半分は… なんだかわからなかった。そんな彼は助手として詐欺師の商いに異国風の雰囲気を添えたのだった。

だました客が気づくころには姿をくらまし、追ってくるカモより先に別の町へと移動を繰り返し、荒廃した地域を旅していた二人だったが、詐欺師はある時気づく。自分がいんちきでやっている仕事を、この若者は実際にできるらしい。助手には才能があった。客から金をとれる類の才能だ。若きラスタは客の前に出ることになり、シャドウ・シャーマンという売り物が生まれた。二人は町から町への旅を続け、シャドウ・シャーマンの名が知れるにつれ儲かるようになった。やがて、過去に行った詐欺が二人を陥れる。騙された昔の客たちから不意に襲撃されたのだ。詐欺師は殺され、ラスタは初めて闇の力を使い、襲撃者たちを返り討ちにした。彼は敬愛する詐欺師を埋葬すると、この力を使って自分に害をなす者を潰すと心に決めたのだった。" "npc_dota_hero_riki_bio" "リキはターリン大王朝に三兄弟の中間子として生まれた。長子は王座を継ぐための教育を受け、末子は甘やかされて育つ中、あくまでも中間子でしかないリキは存在を消す術を学ぶ為に生まれてきたかのようであった。磨いたその術おかげで、王家の者が裏切りによってことごとく殺された夜、彼の命は救われる。王家に連なる者の中で、小柄で俊敏、目立たないリキだけが煙にまぎれて逃げ切った。奇襲の利点を生かして敵兵士の首をひとつ、またひとつと静かに切り裂きながら、リキは王宮外への進路を開いたのだった。今、王家の責務から解放されたリキは、その才能を生かした新しい職に就いている。ステルスアサシンだ。敵を黙らせ、技を磨きながら、家族を殺して王家を潰した者への復讐を彼は待ち望んでいる。" "npc_dota_hero_enigma_bio" "エニグマの出自については何も分かっていない。彼にまつわる真偽不明の昔話や伝説が、遠い昔から言い伝えらえているだけである。実際、エニグマは謎の存在で、真実と言えるのは彼を形容する言葉だけである。すなわち、彼はあまねき力であり、世界を吞む者である。虚無を体現し、ある時には肉体を持つが、ある時には形を持たない。次元と次元の間に存在する獣なのだ。

エニグマはかつて偉大な錬金術師だったという言い伝えがある。宇宙の秘密を解き明かそうとしたが、その傲慢さにより呪われたのだという。別の伝説によると、彼は太古の危険な存在で、混沌が姿を変えたものだという。光が存在する前の、原初の闇から出でたいびつなものなのだ、と。古い言い伝えでは、彼は最初に爆発した星であり、ブラックホールが複雑に発展して意識を持ったものだと言われている。何が彼を動かすのかも分からず、果てしない力を持って存在そのものを破壊しようとしているのだ。" "npc_dota_hero_tinker_bio" "ティンカーのボウシュの一族は知性と狡猾さ、それに魔術との厄介な関係で知られている。彼らは自尊心にかけて知恵に頼って生き、合理的な方法によって解放される自然の力のみを使用する。このような我慢強さは、ボウシュがその証であるように、大きな問題となってきた。ボウシュはかつて、自然の働きを調査する任を負っていた。彼は霧に包まれたヴァイオレット台地の荒野に地下研究所を設立し、大規模な研究を指揮していた。ボウシュとその弟子たちは魔術師がこの世界に負わせる危険を軽蔑していたにも関わらず、傲慢にも理解を超えた領域に足を踏み入れ、その結果、悪夢を世界にもたらしてしまった。 ヴァイオレット台地に開いた穴からは黒い霧が立ち上り、絶え間ない恐怖の音を放つ永遠の闇がそれを覆った。後にヴァイオレット台地事件と呼ばれるあの事件を生き延びたティンカーは、知性と手持ちの仕掛けを利用して脱出したボウシュただ一人であった。 " "npc_dota_hero_sniper_bio" "カーデル・シャープアイはノルン山地の奥に生まれた。太古の昔から、キーン族が村の上の崖地に住む不思議な動物、スティープストーカーを狩って暮らしている地だった。その動物を遠くから撃ち、崖下に落ちた死体を回収するのが彼らの生業だった。シャープアイの射撃の腕は山に住むキーン族の中でも一二を争うほどで、飛び道具は彼にとってもう一本の腕であり、指と同じように自然に扱えるものだった。

彼が召喚されたのは、村中から名声を得た日だった。シャープアイは伝統の試練を受けたのだ。それは、谷底から一発で獣を撃ち落とすという試練だった。外せば面目を失う。村中が見守る中、彼は撃った。1匹のスティープストーカーが崖から落ち、観衆を沸かせた。しかし、その死体が回収されたとき、村は一変して静まり返った。銃弾はスティープストーカーの中央に輝く目を打ち抜き、口腔に落ちて嚙みしめられていた。この凶兆はそのまま悪い予言の始まりだった。このような銃撃を行った射手は卓越した腕の持ち主であり、同時に追放された流人となると示されたのだ。「スナイパー」シャープアイはこうして、自らの腕により村を去るよう言い渡された。戦場で伝説的な名声を手に入れるまで、彼は村に戻ることが許されていない。" "npc_dota_hero_necrolyte_bio" "大疫病の時代に高位の司教たちが次々と死に、ロタンジェールという名の無名の腹黒い修道士が枢機卿に昇格した。他の司教たちが疫病から人々を守るために院外へ向かったのに対し、新たに枢機卿となった彼はルマスク大聖堂に留まり、死にかけた貴族たちから領地を奪う計画を画策していた。領地を渡せば霊験を約束するという計画だった。疫病が収束に向かうと、その悪事は白日の下にさらされた。教団はロタンジェールにゆっくりと体を蝕む魔法をかけた上で、疫病患者用の病棟での奉仕の刑を与えた。彼が持つ生来の免疫力を教団は気に留めていなかった。ロタンジェールは痘瘡にかかったが死なず、逆に力がみなぎるのを感じ、疫病の魔術を操る疫病法王となった。ネクロフォスと名乗ることにした彼は世界を旅して疫病をばらまき、行く先々の村を消し去りながら、自身の力を強めている。" "npc_dota_hero_slardar_bio" "スラーダーは深淵の者たちの一種族、スリザリーンで、沈んだ都市とそこに眠る古き富の守り手である。光の届かぬ深い海の底で、彼はスリザリーンガードとして隠れた宝物庫を守っており、地上の強欲な妖術師の命で送り込まれた水中盗賊に目を光らせている。任務に忠実で寡黙なスラーダーは、海中の極秘の場所に関する情報を漏らさない。海中の宝に対して不埒な計画を企てる者がいないか調べるためなら、彼は体が痛むのも厭わず光射す浅い場所にやってくる。時には、海底の宝物庫からなんとか宝を盗み出した者を容赦なく追跡することもある。水圧の高い、海のとてつもない重みを受ける場所でずっと暮らしてきたスリザリーンガードのスラーダーは、計り知れない力の持ち主なのだ。" "npc_dota_hero_beastmaster_bio" "カロクにとって飼育動物は親代わりだった。母親は彼を分娩したときに命を落とし、父親はスロム王国最後の王に仕える蹄鉄工だったが、カロクが5歳の時に馬に踏みつけられて命を落とした。両親を亡くした彼は、王の私有動物園で奉公し、宮廷に飼われている動物たちの間で育つことになった。そこにいたのはライオンや猿、フェルディア、それに知名度の低い動物や、存在をほとんど信じられていないような動物だった。幼きカロクが7歳のとき、ある冒険家が見たこともないような獣を持ち帰った。鎖につながれて王の前に連れてこられたその獣は、言葉を話したが口は動いていなかった。獣は解放してくれと懇願した。王はそれを笑い飛ばし、何か芸をしてみせろと言った。獣が拒否すると、王は獣を狂気のセプターで打ち据え、動物小屋に連れていけと命じたのだった。

その後の数か月、少年カロクは傷ついた獣のために食べ物と薬品をこっそりと手に入れ与えたが、それも傷の悪化を遅くさせただけだった。獣は口を動かさないまま少年に話しかけた。ふたりの絆は深まり、ある日、カロクは自分が獣と双方向に会話をしていることに気づく。それどころか、彼は王の所有するすべての動物たちと話せるようになっていた。獣が死んだ夜、少年は激憤に駆られる。彼は宮廷の動物に反乱をけしかけ、彼らの檻を開けた。怒り狂う動物たちが宮廷に放たれる。この騒動の中で王は動物から袋叩きにされたのだった。混乱の中、一匹の立派な雄鹿が自分を解放した少年に首を垂れた。ビーストマスターとなったカロクを背に乗せ、雄鹿は王宮の高い壁を飛び越え、逃げ出した。大人になった今でも、カロクの野生動物と会話できる能力は失われていない。彼は自然の残忍さを備えた戦士となったのだ。" "npc_dota_hero_venomancer_bio" "ジディ島のアシッドジャングルは、腐食性の樹液をにじませる蛍光色の植物が繁茂する密林で、そこを這い、つるに登り、宙を滑空する生き物は皆、血液や体液に毒を持っている。この毒の楽園の中でもっとも毒性が高いとされるのが、ヴェノマンサーである。あれは遠い昔、レセールという名の薬草学者がコラクル舟でフラジ湾を渡っていたときのことだ。彼は樹皮や根から抽出できるエキスを探し求めていたのだが、結局、恐ろしい変身を遂げることになった。ジャングルに入って数時間ほどたった時、レセールはラン科の植物に擬態したトカゲに遭遇した。植物と勘違いしてその生物をうっかり引き抜こうとし、レセールは刺されてしまう。必死の状態になった彼は、ジャングルに生える薬草に関する断片的な知識を利用して薬を調合した。素早く絞殺したトカゲの毒を硬皮ランの花蜜と混ぜ、それは解毒薬になった。体が完全に麻痺してしまう間際に、彼は薬をランの棘で体内に注入し、次の瞬間には意識を失った。

17年後、レセールが倒れた場所で何かが動いた。時間とともに積もった腐葉土を振り払って起き上がったのは、ヴェノマンサーだった。薬草学者のレセールはレセール・デスブリンガーとなって蘇ったのだ。彼の精神は消えたも同然で、彼の体は腐って、トカゲの毒とランの外皮を併せ持つ新しい肉体に変わっていた。ジディ島のアシッドジャングルに新しい支配者が現れた。獰猛な捕食者たちでさえも、その命のために彼に跪き、首を垂れた。閉鎖的な蛍光色の島は、酷い飢えに憑りつかれたヴェノマンサーには狭すぎた。レセールは新しい毒を――もたらすべき死を求めて島を飛び出したのだった。" "npc_dota_hero_faceless_void_bio" "フェイスレスボイドことダークテラーは時間の外側にある領域クラズレムからの来訪者だ。わざわざ別次元から物質界に入ってまでネメシスストーンを欲する理由は謎だが、この世界のバランスが崩れると近隣の次元にも影響が及ぶことは明らかだ。ダークテラーにとって、敵を妨害して味方を支援する方法であるという以外に、時間は意味を持たない。悠久の時を宇宙を見て過ごした彼はいつまでも打ち解けない俗世離れしたタイプだが、戦場では個人的な恨みにこだわるらしい。" "npc_dota_hero_death_prophet_bio" "クロベラスはデスプロフェット、すなわちあの世を垣間見たいと願う金持ち相手に予言する占い師であった。そして、彼らのために予言を重ねるにつれ、彼女は自分の運命を知りたいと願うようになった。死がその秘密を明かすのを拒んだとき、彼女は命と引き換えに教えてくれと頼んだ。しかし、この究極の代償でも、まだ足りなかった。

死は彼女を繰り返し吐き戻し、隠された秘密を教えようとはしなかった。クロベラスは妬みを募らせる。誰もが永遠の死を迎えるのに、自分はそうならないのはなぜか? うんざりするほど毎回、生の岸辺に押し返されるのはなぜなのか? 他のあらゆる生き物が当たり前に得ているものが、なぜ自分には与えられないのか? それでも、彼女は諦めようとはしなかった。

墓から起き上がるたび、彼女は小さな死を共に連れ帰った。レイスたちが砕かれた彼女の魂のかけらのようにして付き従った。血は薄くなりエクトプラズムのようだった。黄昏時に獲物を襲う怪物が、彼女を仲間とみなすようになった。死亡するたびにクロベラスは命の一部を少しずつ手放し、やがて終焉が近いと思えるようになった。死への献身が倍加し、自身以外には顧客もいなくなった彼女は、ますます死の深淵にのめり込むようになる。それは自分の手から逃れ続ける運命を手に入れるためだ。いつか必ず、デスプロフェットは生に戻ることのない永遠の死を手に入れる。" "npc_dota_hero_pugna_bio" "プーニャが生まれたのはネザーリーチのはずれだ。そこにはネザーのエネルギーを引き出す「オブリビオンのみわざ」教の寺院があった。寺院のグランドマスターは数年前にオブリビオンへと渡っており、寺院には指導者がいなかった。グランドマスターの死亡以降、寺院の上層部はグランドマスターの生まれ変わりを発見するための儀式を始めていた。やがてその儀式は、生まれ変わりがすぐ近くにいることを示唆し始めた。寺院にほど近い村々では、路地や広場にはしゃぐ子どもたちの笑い声が満ちていた。

1歳になったばかりだったプーニャは、この地域の子どもの中から選ばれた、生まれ変わりの候補の一人だった。定めの日、彼は他の二人の候補と共に寺院に連れていかれた。僧たちが先代グランドマスターの至宝であった古い遺物をいくつか子どもたちに差し出した。候補の男の子が一人、かつてグランドマスターが使っていた斑岩の杖に手を伸ばし… 鼻の穴に突っ込んだ。活発な女の子は、グランドマスターが身に着けていたアミュレットを引っ張ると、飲み込んでしまった。プーニャはそんな二人を冷ややかな目で見ると、エメラルド色の炎を彼らに吹き付け、あっという間に灰にしてしまった。そして、杖とアミュレットを拾い上げると、「僕のだ!」と叫んだ。笑みを浮かべるプーニャを僧たちは肩に担ぎ上げ、グランドマスターの祭服で包むと、プーニャの機嫌が変わる前に急いで御座に座らせた。5年の間に、寺院までもが灰燼に帰し、プーニャはすっかり満足したのだった。" "npc_dota_hero_templar_assassin_bio" "テンプラーアサシンのラナヤがこの職に就いたのには不思議な経緯がある。科学に魅了されていた彼女は、青年期に自然の法則について事細かに研究した。魔術や錬金術に関する本を読み、ヴァイオレットアーカイブの焼け焦げた断片から実験を再現し、キーン族の記録官による観測報告を暗記した。もともと物静かで内向的だったラナヤだが、このような研究対象の品を手に入れる際の困難が彼女の隠密技術を強化した。彼女がこれほど内気でなければ、ギルドで名うての学者盗賊になっていただろう。しかし、研究を通じてラナヤはより影の濃い道へ進むことになる。

世界の秘密を解き明かすために隠密の才能を使い続けたラナヤは、自然そのものに存在する秘密の扉を開く。それは「隠れ寺院」への入り口だった。この扉の向こうで待っていた、すぐれた知性の持ち主たちはラナヤを待ち望んでいたらしい。しかし、彼らを見つけた時に明かされた謎も、ラナヤが彼らのために働き続ければ与えられるという謎への答えには比ぶべくもない。ラナヤは秘密を守ることを誓ったが、彼女にとってそれにもまして重要なのは、「隠れ寺院」に奉仕することで、飽くなき探究心を満たせるという点だった。敵を消すたびに、謎が一つ解き明かされるのだ。" "npc_dota_hero_viper_bio" "残虐趣味の魔術師が飼いならすことを目的に捕獲した凶暴な使い魔ヴァイパーは、閉ざされた不変の地下領域ネザーリーチから出られたことを喜んでいた。そこに住む種族ネザードレイクは地殻変動によって何百万年もの間、光の洞窟に閉じ込められていたのだ。ヴァイパーはしばらくは魔術師に従う素振りをし、彼が操る闇の魔術を習得しようとした。しかしすぐに、自分が生まれながらに持つ毒と同じくらい危険な魔術は少ないことに気づく。酸を吐き出して自分を囲う檻を瞬く間に溶かし、ヴァイパーは年老いた魔術師の目に毒を吐きかけて、自由の身になった。ネザードレイクは空へ舞い上がる。世界に新たなる主が誕生したことを知らせに。" "npc_dota_hero_luna_bio" "なぜこれほど落ちぶれたのだろう。ルナはかつてプレーンズを席巻し、人間と獣を率い、望めばどこにでも恐怖の種をまくことができた。なのに今や、故郷から遠く離れ、飢えと数か月にもわたる放浪から半分狂気に陥っている。率いていた部隊はとっくに死んだか、あるいはもっと悪い状態になっているだろう。太古の森のはずれに立つルナを、古木の枝から二つの目がじっと見ている。美しく恐ろしいものが、もう少しで夜を迎えようという空の下、獲物を品定めしていた。音も立てず、それは背を向け去ってしまった。ルナは怒りに駆られる。錆びついたダガーを掴み、過去の栄光のいくぶんかでも取り戻そうと、彼女は獣に飛び掛かる。しかし、叶わなかった。彼女は三度ほど岩や木々の間で獣を追い詰めたが、飛び掛かっても樹間に消える獣の影が見えるばかりであった。だが、満月が森を照らしているおかげで、痕跡を追うのは難しくない。

小高い丘の開けた頂上に逃げた獣は、大きなネコ科の動物のような姿をしていた。頂上に腰を落ち着け、待っている。ルナがダガーを振り回すと、獣は後ずさりして咆哮を上げ、突進してきた。ようやく、この奇妙な場所で彼女に死が訪れるらしかった。ルナは逃げようともせず、じっと待つ。動きが見えたかと思った瞬間、獣は彼女の手からダガー奪って森の中へと消えてしまった。静寂――そこへ頭巾をかぶった者が現れ、月の女神セレメネの思し召しだと恭しく告げた。女神がルナを選び、導き、試練を課したのだ、と。ルナはナイトシルバーの森の戦団「暗き月」の儀式を図らずも耐え抜いたらしい。

彼女には選択肢が示された。「暗き月」に加わりセレメネへの奉仕を誓うか、この場を去って二度と戻らないかを決めろという。ルナは迷うことなく、罪の赦される道を選んだ。残虐な過去と訣別し、「暗き月」のルナとして生きると誓う。それは恐るべきムーンライダーとなり、銀夜の森に忠義を尽くす無情な守り手となる道であった。" "npc_dota_hero_dragon_knight_bio" "長年にわたり伝説のエルドヴルムを追い続けた騎士ダビオンだったが、追い詰めてみればそれは期待外れであった。恐れられていたスライラクは老いて弱り、その翼はずたぼろで、ほとんど残っていない鱗は腐鱗病に侵されていた。牙は削れて小さなこぶのようで、口から吐かれる炎は濡れたマッチ棒ほどの威力もない。

このドラゴンを倒したところで栄光は得られまいと判断したダビオンは、背を向け、ドラゴンに穏やかな死を迎えさせることにした。しかし、彼の思考に声が語りかける。それはスライラクの懇願であった。戦闘で命を落とす方が、自分にとっては誉れあることだ、とドラゴンは言う。ダビオンはその声に応え、結果、この情けにより予想以上のものを手にした。ダビオンがその剣をドラゴンの胸に突き刺すと、ドラゴンはダビオンの喉に爪を立てた。騎士と竜の血が混じり合うと、スライラクの力と数百年にわたって蓄積された知恵が血を伝ってダビオンに流れ込んだ。ドラゴンの死により絆が結ばれ、ここにドラゴンナイトが誕生する。ダビオンの中には古き力が眠っている。彼が呼ぶとその力が目を覚ます。あるいは竜の方が騎士を呼ぶのかもしれない…" "npc_dota_hero_dark_seer_bio" "ダークシーア、イシュカフェルは状況によって機敏に行動することもあるが、抜け目のない戦略家であり、敵を倒すのに鋭い刃を必要としない。彼が頼るのは、強大な精神力だ。彼の才能は自軍に有利になるように戦闘を操る能力にある。「壁の向こう側」と彼が呼ぶ場所から呼びかけるのがイシュカフェルの戦い方だ。ダークシーアは現実のベールを隔てた領域にいる戦士なのだ。

かつてのイシュカフェルは偉大な将軍として神王ダマスリクスを守る英雄だった。しかし、彼の率いる軍はかの国境大戦の最終盤でより大きな敵軍に殲滅される。敗北が決定的になり、イシュカフェルは決死の策に出た。敵軍を「壁」の間の迷宮に誘い込むのだ。あと少しで捕らえられるというところで、彼は壁を越え、爆発的な闇のエネルギーを放ち、壁を封印した。土埃が落ち着くと、彼の策は成功していたが、同時に自分の体が別の世界の太陽を浴びていることも分かった。元の世界には帰れそうにない。イシュカフェルは今、軍事戦略家としての価値を示し、この新しい世界が見たこともないような腕を持っていると証明しようとしている。" "npc_dota_hero_clinkz_bio" "流血が丘のふもとには広大な森が広がっている。ホーヴェンという名のその森には丘から流れるどろりとした血の池がいくつもあり、魔術王スザレクスが善政を敷いていた。クリンクスはホーヴェンへの献身を誓った守り手で、弓の名手と評価されていた。魔術王の統治が300年を迎えたとき、地獄の第六圏から来た悪魔マラキシフォルムが森の領有権を主張した。これに対して魔術王は破ることのできない呪文を発する。悪魔マラキシフォルムを打ち倒した者には「終わりなき命」を与える、というものであった。

呪文のことを知らないクリンクスは果敢に戦闘に加わり、悪魔の猛攻から森を守った。彼はマラキシフォルムを地獄第六圏の入り口にまで追い詰め、二者は死闘を繰り広げる。ひどい傷を負ったマラキシフォルムだったが、クリンクスが最後の矢を射ると、地獄の業火を放った。クリンクスの矢は悪魔の正中を射貫き、マラキシフォルムの業火は森へなだれ込んだ。火は血の池を燃やし、悪魔の死と共にクリンクスを生きながらに焼いた。この瞬間、魔術王の呪文が発動する。体に地獄の炎を宿し、骨と怒りだけの死の瞬間を、クリンクスは永遠に生きることになったのだ。" "npc_dota_hero_enchantress_bio" "アイウシュタは無垢で屈託のない森の生き物のように見えるし、それは間違いないのだが、彼女の物語はそれがすべてではない。彼女は自然界の苦しみをよく理解している。あまねく場所をさすらったアイウシュタは、明るい森も荒涼とした森も経験した。あらゆる天候、あらゆる季節の森に住み、仲間を集め、情報を交換し、行く先々で笑いを振りまき、周囲を癒やした。戦がすべてを破壊する世界では、森は船をや攻城兵器を造るために伐採される。平和な場所であっても、家を建て、暖炉に火を入れるために木々は伐り倒されている。

アイウシュタは小さな命の訴えに耳を傾ける。姿を隠すようにして暮らす彼らには、生き延びるための木陰や樹上の葉が必要なのだ。彼女は誰も耳を貸さぬものの声を聴き、それを森から世界へと広める。自分が笑顔でいることが一種の魔法であり、緑豊かな未来を作るのだと信じて。" "npc_dota_hero_omniknight_bio" "ピュアリスト・サンダーラスは激しい戦いの旅路に鍛えられた、献身的な騎士だった。所属していた騎士団では、幼い頃から従者として働き、名声を得た年長の騎士に仕えていた。彼が献身を誓ったのは〈すべてを見通す者〉オムニシャンスである。聖戦のために戦場へ派遣された彼は、若者に特有の闘志と勢いを持つ間は、この任務に疑問を持たなかった。しかし、抗戦が長引くと、年長の者たちは命を落としてぬかるんだわだちの脇に埋葬され、絆を結んだ仲間たちはオムニシャンスに服従しない粗野な生き物に倒されていった。また、彼自身の従者たちも、奇襲や伝染病、腐った水などによって亡くなった。これらのことが起こるにつれ、彼は自分が立てた誓いに――この戦そのものに疑問を抱くようになったのだった。

深く黙想したサンダーラスは騎士団に別れを告げ、蜂の巣のように空洞の多いエマウラカスの崖地を目指し、長い帰路についた。彼はかの地で、オムニシャンスの司祭たちに難題を投げかけた。これまで、司祭たちに疑問を持つ騎士はいなかった。司祭たちはサンダーラスを犠牲の穴に投げ込もうとしたが、彼が従うことはなかった。彼が司祭たちに立ち向かったとき、彼の体は聖なる光を放ち始めたからだ。オムニシャンスがサンダーラスの体を使って顕現したのだった。神官長はサンダーラスを最聖なる深き房へと向かう旅に送り出した。そこに待ち受けているのは、抽象的な知恵や知識などというものでも、信じるには想像力が必要な彫刻像などでもなく、古き者そのものだ。古き者は岩の陰に永きにわたってただ潜んでいたわけではない。その岩を作ったのも古き者だった。

オムニシャンスは星の周囲に巨大な鉱物の殻を作り、宇宙から来る無数の脅威への防護壁とした。オムニシャンスの創世譚を聞き、その他さまざまな真実を告げられたサンダーラスには、反論すべき根拠など見つからなかった。もしかすると、オムニシャンスは噓をついており、本当は石の牢獄に閉じ込められただけの罪人で、創造主などではないのかもしれないが、オムニナイトが自分の信仰に疑念を持つことは二度となかった。彼には戦う理由ができた。注ぎ込まれる神々しい力と、共に戦う仲間に与えられる強さが本物であることに、疑いの余地はないのだ。" "npc_dota_hero_huskar_bio" "聖ノスル界の苦難からようやく抜け出したハスカーが見たのは、シャドウプリーストのダズルが自分に不可解な呪文を唱えている姿だった。デズン教団の古の儀式に抵抗し、ハスカーの魂は永遠から救われたが、ノスルに入る他の者たちと同じく、彼自身も取り返しのつかないほど変化していると気づいた。彼はもはや命ある体に翻弄されることはなく、その生き血には信じられないほどの力が宿っていた。血がこぼれるたびに、燃えるような激しいエネルギーが10倍になって返ってくるのだ。しかし、この新しく得た贈り物にハスカーは激怒した。ダズルが彼をノスルから助け出したことで、彼は神々の仲間入りができなくなった。彼は自らの聖なる犠牲を否定されたのだ。

やがて、影響力を強化しようとした教団の長老たちは、その過程においてハスカーがよい道具になるだろうと考えた。しかし、単なる武器として自分の生得権を否定した教団のために働くことは、ハスカーの怒りに油を注ぐようなものだった。戦火が迫った時、彼は住み慣れた故郷を逃げ出し、新しい仲間を探すことにしたのだった。犠牲によって得た力を解き放つだけの価値がある大義を求めて。" "npc_dota_hero_night_stalker_bio" "ナイトストーカーには過去というものがない。物語があるだけだ。それはあらゆる種族、あらゆる文化圏において語られる古い伝説だ。陽光や昼間というものがない時代、夜が統べる時代の話である。その頃、世界には闇の生物――ナイトストーカーのバラナーのような生物が満ちていたという。

「はじまりの日」の夜明け、夜の生物たちは滅んだ。いや、1体を除いて滅んだ。悪の化身であるナイトストーカーだけが、邪悪な笑みを浮かべていた。彼は主人格であるナイトテラー「ブギーマン」を作り出し、子どもを怖がらせる者として呼び出されることになった。これは彼がしみじみと好む役柄で、空虚な演劇などでは決してない。ナイトストーカーは不注意で無防備な者たちが、暗がりに入ったり、人目を離れたりしたとき、その後をつける。ナイトストーカーは子どもたちが見る最恐の悪夢は、実際のところ真実であるという生きた証拠なのだ。" "npc_dota_hero_broodmother_bio" "ブルードマザーのブラックアラクニアは、溶岩のトンネルの中に何世紀にもわたって潜んでいた。場所はパイロセオ山。煙を上げるそのカルデラの下は安全で、そこで数百万もの子どもたちを育てて地上の世界に送り出し、獲物を探させていたのだ。後の時代、強欲な高官であるソロプタレスは死火山の山腹に天然磁石でできたジッグラトを建てた。クモだらけの山道が自分の宝を盗人から守ってくれると考えたのだった。

母として千年の平穏を生きたのち、ブラックアラクニアは獣やケチな盗人、図太い騎士、貴族の若者たちなどが断続的にこの山に侵入していることに気づいた。彼らは確かに美味ではあったが、子どもたちの育成に適しているとは言えない環境を作り出していた。侵入にうんざりした彼女は、ソロプタレスを訪ねる。彼には歩み寄る姿勢がないと見るや否や、ブラックアラクニアはその強欲な高官を繭に包み、誕生会のごちそうの目玉とすることにした。

残念ながら、ジッグラトの主がいなくなったことで、次の世代の侵入者たちはますます大胆になった。一匹の幼クモが不注意な冒険者に踏みつぶされたとき、ブラックアラクニアの我慢は限界に達した。彼女は地上に向かい、世界から侵入者になりそうな者たちを一人残らず消すと宣言した。大切な子どもたちにとって安全かつ健全な環境を取り戻すまで、必要であればヒーローが一人残らずいなくなるまで休むつもりはない。" "npc_dota_hero_bounty_hunter_bio" "バウンティハンターのゴンダールに狩られた者の言葉はどれが真実なのか… それは誰にも分からない。ある者は、ゴンダールは子どもの時に捨てられ、生きるために追跡術を学んだのだとささやく。彼は戦争孤児であり、凄腕の狩人ソルクに引き取られて、大きな獲物を求めて暗い森の中で剣術を習得した、という話もある。別の者は、彼はスリや泥棒のギルドで育てられた卑しい浮浪児で、忍びと欺瞞の術を教わったと信じている。辺鄙な土地で焚き火を囲むゴンダールの獲物は、彼の偉業を噂し、さらにその恐怖を募らせる。噂によると、狂気の暴君ゴフ王が身を隠してから何年も経って居場所を突き止めたゴンダールは、王の首と王笏を証拠として持ち帰ったらしい。また、ハイシートに構えていた反逆者集団の野営に潜り込み、伝説の盗人ホワイトケープを遂に裁きの場へと引きずり出した、とも言われている。王子自慢のヘルカイトを殺害した罪で狩人ソルクを失業に追い込んだ話など、噂は尽きることはない。ゴンダールの信じがたい技の逸話には尾ひれがつき、その偉業はますます信じがたく、獲物は捕らえられるはずのない強敵となっていく。見合う賞金がかけられれば、誰も彼から逃れられない。最強の者でさえ、影の中に恐怖を見てしまうのだ。" "npc_dota_hero_weaver_bio" "織物を作るときには常に細心の注意を払わねばならない。さもなくば、ただのぼろきれができてしまう。織物を解くと、世界のすべてが解ける。織物を解けないようにし、現実の織り目に開いた穴を補修するのはウィーバーの仕事だ。また、擦り切れた部分を弱らせ、卵を産み付けるような輩から世界を守ってもいる。ウィーバーが気を抜くと、卵から生まれた幼生はいとも簡単に世界を食い尽くしてしまうのだ。スキッツカーは腕の良いウィーバーとして、ある小さな織物一つを担当し、解けることも色あせることもないように保っていた。しかし、それはやりがいのある仕事とは言えなかった。今ある織物はすべて過去に作られたもので、織機は仕事を終えて旅立った後だった。スキッツカーがしたいのはメンテナンスなどではなく、自ら世界を織り出すことだった。彼は自分の担当する領域にちょっとしたアレンジを加え始めた。創作の興奮に病みつきになったスキッツカーは大胆さを増し、織機の織った模様を変えるようになった。

はさみを持った監視者がやってきて、スキッツカーの世界を宇宙のタペストリーから切り取った。そこには彼の影響のないものが再び織り込まれた。スキッツカーは仲間から切り離されて孤独だった。ウィーバーなら誰でも苦痛を感じる状況だ。しかし、スキッツカーは違った。自由になったことを喜んでいた。自分のためだけに創作し、新しいものを作る自由があるのだ。新しい世界を織り出すために必要な素材は周囲に揃っていた。あとは古い世界を縫い目の部分で切り裂けばよい。" "npc_dota_hero_jakiro_bio" "魔法生物の中でも、双頭の竜は珍しい。氷と炎、狡猾さと激しさ、二つの要素を等しく持つその竜はジャキロという名だ。竜は戦場を焼き、凍り付かせながら滑空し、武器を持って寄ってくる者すべてを屠る。パイレクサドラゴンは一度の出産で2匹の竜を生む。誕生した瞬間から獰猛であることで知られ、卵を破ったばかりでも、巣にいるうちから自分のきょうだいを殺そうとする。強い者だけが生き残る。パイレクサはこうしてその強靭さを継いできたのだ。自然のいたずらか、一つの卵から生まれた奇形のジャキロは、パイレクサ種に見られる様々な能力を併せ持っている。巨大な体の硬い鱗の下には、氷と炎の力が秘められている。どんな敵もただでは済まないだろう。" "npc_dota_hero_batrider_bio" "ヤーマラスカフ・ジャングルにいる生物の間に、調和というものは存在しない。噛みつき、引っかき、挟み、踏みつけ、ほんの少しの弱さでも見せれば、それはすぐに死につながる。聞くところによると、ライダーは若いころ、家族の畑でわらを刻んでいたときに、食べ物を探していた巨大なコウモリに連れ去られたという。しかし、彼は賢かった。身をよじらせて爪を逃れ、コウモリの背に乗ると、手にしていた鎌でコウモリをたたき切った。血にまみれた死骸の中から空を飛んだ時の興奮と共に立ち上がった彼は、自分の求めていたものを知った。

大人になったライダーは、毎夏を家族の畑で過ごした。そこではたびたびジャングルに足を踏み入れ、大きな顎を持つものや突然の転落などを求めた。死を前にして感じた初めての興奮を再び感じるためだった。年月が経っても、彼の欲求は大きくなるばかりだ。ジャングルについて調べ、入るたびに奥へ奥へと足を延ばした結果、心が休まることのないジャングルの中心でついにあの洞窟にたどり着く。その焼けつくように暑い夏の夜、ライダーは一条の縄と度胸、もう一度空を飛ぶという強い決意だけを頼りに、暗がりへと踏み入れたのだった…" "npc_dota_hero_chen_bio" "信仰のないハザダル荒野に生まれたチェンは、陽炎揺らめく砂漠の中で細々と暮らす無頼の部族に育った。動物を魅了する古い術を使うその部族では、高温に耐える砂漠のロクティを飼いならしていた。ロクティは砂に潜るドラゴンが発育不全で別の種となったもので、砂漠の砂を溶かしてガラス管に変え、そこには年に二回降る雨が集まるのだという。常に飢餓と渇水の瀬戸際にあり、隣人や仲間との争いが絶えないチェンの部族は、過ちを犯してしまう。あの運命の日、彼らは襲ってはいけない相手を襲ってしまった。

激しい戦いになり、チェンの部族には不利な状況だった。フォールドの騎士が飼いならされたロクティを素早く始末した。部族のドラゴンが死に、部族の戦士たちもそれに続いた。チェンは奮闘し、相手をなぎ倒し、爪を立てたが、命を落とした。いや、落とすはずだった。敗北し膝をついたチェンは自らの処刑を抗うことなく受け入れ、首を差し出した。チェンの勇敢さに心を打たれた処刑人が、剣の動きを止める。首を落とされる代わりに、チェンには選択肢が与えられた。死か、改宗か。チェンは猛烈な勢いで信仰を受け入れ、フォールドに加わった。血みどろの改宗を繰り返し、鎧を手に入れた。そして今、改宗したからこその狂信と、最大限に磨かれた動物を魅了する術をもって、彼は不信心者を探し出しては永遠の眠りを届けているのである。" "npc_dota_hero_spectre_bio" "エネルギーが高い状態から低い状態へ移動するのと同じ理由で、強烈で暴力的なエネルギー体であるスペクターのマーキュリアルは、物質界で展開される争いの場に引きつけられる。通常の霊体では感覚の限界を超越しているものの、物質界に顕現するといつでも、意図はしないが自分を見失ってしまう。戦闘中、彼女のアイデンティティは砕けて再定義され、やがて意識が戻り始める。そして自分がスペクターのマーキュリアルであり 、どのホーントも本物のスペクターの影でしかないことを認識する。生存がかかる中では集中し、本心が再び主張を始める。勝利か敗北かを分ける決定的瞬間を過ぎると、彼女は物質を超越した不滅の形態へと戻るのである。" "npc_dota_hero_doom_bringer_bio" "焼かれようとも燃えることはなく、むさぼり食おうとも決して満たされることはなく、殺しても裁きを受けぬ者――ルシファーは楯突くすべての者たちに破滅をもたらす。炎をまとう剣先で魂を摘み取る彼は「堕落者」である。光の向こうの領域ではかつて将軍を務めていたが、不服従の罪により追放されたのだった。

六回、ヴァシュンドルの大鐘から彼の名が呼ばれた。六十と六回、彼の翼には焼き印が押され、あとにはくすぶる印だけが残った。翼を失った彼は自分を光の世界につなぎとめていた縛を抜け、叫び声を上げながら地上に落ちた。そこは砂漠の中の窪地。楽園は失われた。今、彼は慈悲も動機もなく危害を加え、七層の闇の領域を自由に行き来できる唯一の生者である。免れ得ない欲求に突き動かされ、想像を絶する才能にねじ曲げられたドゥームは行く先々に地獄をもたらす。決して服従することはない。世界はやがてドゥームのものとなるだろう。" "npc_dota_hero_ancient_apparition_bio" "エンシェントアパリションのカルドルは、時を超越した場所から投影された幻影だ。彼は宇宙以前から存在し、その終焉を待つ、冷たい無限の空間から発生した。カルドルは、現在、過去、未来においてカルドルであり続ける。人間の目にはその姿のとおり強そうに見えるが、それは永遠なる真のカルドルの消えゆく薄い残滓でしかない。宇宙が老い、その最後の瞬間に向かっていくにつれ、カルドルの輝きと力が増していくとも言われている。つまり、永遠の終わりが近づけば近づくほど、カルドルは若返り、強くなるというのだ。彼が氷の力によって万物を停止するとき、その姿は目を潰してしまう程の光を放つ。その時、カルドルはもはや幻影ではなくなるだろう!" "npc_dota_hero_ursa_bio" "クマの一族の中で最も獰猛な戦士ウルフサールは、一族の土地と仲間を守る。長い冬の間、母グマが子育てと冬眠に勤しむ間、雄グマたちは地上で昔からの方法で番をして、休むことなく見張りを続ける。悪が蔓延るという噂だけでもあれば、ウルフサールは原生林の住処を離れて脅威に向かう。一族に害が及ぶ前に、危険を見つけて排除するためだ。知性と強靭な精神を持つ誇り高き生物。彼は信頼に値する守護者だ。" "npc_dota_hero_gyrocopter_bio" "生涯を戦争、動乱、暴動、そして革命に捧げたオーレルを、軍の上層部はもう十分に生きただろうと考えていた。しかし、少しばかりの装身具と少なくはない年金に加えて、かつてのエンジニアははるかに興味深いものを軍から持ち去った。それは長く忘れられていた未完成の設計図――ジャイロコプターの設計図だ。魔法によらない世界初の有人飛行機械が計画されていたのだ。人影まばらな南国のアッシュ群島で引退生活を送るオーレルには、時間と金だけは十分にあった。彼はそこでこの機械の製作に取り掛かった。

時が経ち、失敗作の残骸が山になっていくにつれ、飛ぶ機械などというものが本当に作れるのか、オーレルは疑問に思うようになった。引退から十年と一日経った、晴れた日の午後のことだ。オーレルは南風を受け、憤りを感じながら、再び失敗するであろう新しい試作機に乗り込んだ。始動ケーブルを引き、頭を覆って爆発に備える――すると驚いたことに機械は上昇し始めた。慌てていくつか調整を加えると、機械は安定した。一時間のうちに、彼は風とたわむれ、カモメと並んで飛行していた。その胸は飛ぶことに対する息もつけないほどの驚嘆に満ちていた。

夕焼けがだんだんと暗さを増していく中、オーレルは工房への帰路につくことにした。しかし、機械を方向転換させるや否や、砲弾がその尾翼を突き抜けた。残骸の間から頭を出したオーレルは、目についた一番近くの陸地へ向かって泳ぐ。そして砲弾を発射した船が残骸を集めているのを見て、悪態をついた。数日して工房に戻ったオーレルは、再びジャイロコプターの製作に取り掛かる。新しい機体にはもっとたくさんの危険な兵器を積めるようにするつもりだ。" "npc_dota_hero_spirit_breaker_bio" "スピリットブレイカーのバラトルムは威厳と力を兼ね備えている。好戦的な彼はで元素に精通しており、故郷である元素界に影響を与えている出来事に加わるべく、次元を超えて物質界に入ることにした。この目的のため、こちらの世界と外側の世界の両方で使える姿を作り出した。物理形態はこの世界の力を借りたもので、ウシとサルの特徴を併せ持つ。角と蹄、それに手にその特徴が現れている。内なる強さ、素早さ、狡猾さが、象徴となって外観に現れているのだ。鼻につけたリングは、彼に隠れた主人がいること、今いるこの世界は本当の世界の影でしかないことを思い出すためのよすがだ。" "npc_dota_hero_alchemist_bio" "神聖なる化学はダークブリュー家の伝統だったが、若きラジルほど創造性や野心、無謀さを見せた者はそれまでいなかった。しかし、大人になったラジルは家業を脇に押しやり、錬金術による金の生成に手を出すようになった。

評判にふさわしい大胆さで、ラジルは山一つをすべて金に変えると宣言した。その後の20年を研究と出費と準備に費やしたラジルだったが、壮観とも言えるほどの失敗に終わり、すぐに広範囲にわたる破壊の罪で牢に入れられた。それでも、ラジルは簡単には挫折を受け入れず、脱出して研究を続けようと試みた。

新しい同房者として獰猛なオーガがやって来た時、これは絶好の機会だ、とラジルは思った。自分を食べないようオーガを説得すると、彼は牢獄の石壁に生えるカビや苔から薬を作って、オーガに飲ませることにした。一週間ほど経って薬ができあがった。それをオーガに飲ませると、オーガは突然バーサーカーのごとく怒り狂い、牢の格子を引きちぎり、看守もろとも壁を突き破った。

脱走後、二人は街を囲む森の中で道に迷っていた。二人の通った場所には破壊の残骸が痕跡として残されていたが、追跡の兆候はなかった。薬の効果が切れてくると、オーガは落ち着き、愉快そうな熱意に溢れる様子を見せた。一緒に生きていくことを決めた二人は、ラジルの錬金術に再び挑戦するため、必要な素材を集めに出かけたのだった。" "npc_dota_hero_invoker_bio" "最初期の、一部ではもっとも強力とも言われる形の魔術は、本来、記憶力に頼る技術だった。そこには機器や杖などの術具は必要なく、唯一必要なのは魔術師の精神だけだった。儀式に使われる装飾物は記憶を助ける装置にすぎず、術者が呪文の力を解放するのに必要な特定の精神状態を事細かに思い出すために用意されていた。

その時代の偉大な魔術師たちは記憶力にすばらしく恵まれた者たちだったが、詠唱は非常に複雑で、どの魔術師も専門化せざるを得なかった。熱心な魔術師が生涯に記憶できる呪文はせいぜい三つで、多くても四つが限界だった。並の魔術師なら二つでよしとし、村落で活動する者であれば一つということも珍しくはなかった。その場合ですら、たまにしか声のかからない者は記憶を確かにするために、魔導書を参照しなければならなかった。

しかし、このような初期の術者の中には例外もいた。それが莫大な知性とけた外れの記憶力を持つ、インヴォーカーと呼ばれる魔術師だ。若い頃、この類まれなる魔術師は四つや五つ、いや七つ以上の呪文を習得していた。彼は十以上の術を使え、それらを即座に発動できた。新しい呪文を学びそれが役に立たないと分かると、呪文を一度唱え、記憶から永遠に消してしまうことができた。こうして、別の新しい呪文のためのスペースを空けるのだ。このようにして習得された術の一つが「センピターナル・カントラプ」だ。これは長寿の術で、世界の始まりの頃にこの呪文を唱えた者が今の時代にもまだ生きていると言われている (原子レベルにまで砕かれていなければ)。

このような半不死の者たちは大半が、秘密が外に漏れないよう、静かに暮らしている。しかし、インヴォーカーはこのような特権を隠しておきたい質ではない。齢を重ね他の誰よりも多くの知識を持つ彼だが、その精神にはどういうわけか今もまだ、自身の価値に対する大きな有能感を持ち続けられるスペースがあるのだ。それに、この死にゆく世界がゆっくりと輝きを失っていく間も、自分を楽しませられるだけの呪文を、まだ覚えられるだろう。" "npc_dota_hero_silencer_bio" "計画的に紡がれてきた血筋の七代目にして最後の世代であるノートロムは、世界が目にしたことのないような偉大な魔術の使い手になるべく、古代の教団「エオル・ドライアス」で育てられた。彼は予言された者であり、200年にわたって慎重に生殖の番いを選び続けた結果生まれた、教団に栄光を、仇敵であるナイト・オブ・フォールドに破滅をもたらす戦魔術師なのだ。

ハザダル荒野の丘陵地帯にある秘匿された営舎で、彼は他の魔術師候補たちと共に育った。教団の指導者たちはノートロムの能力が発現するのを待っていた。他の候補生たちが炎や氷、詠唱術の才能を磨く中、ノートロムはなんの才能も示さず、まじない程度の呪文も扱えなかった。最終試験の日が近づいても、ノートロムには自分に合う魔術が分からなかった。嫌気が差した指導者たちはノートロムを𠮟りつけ、級友たちは彼を笑った。「おまえは魔術師ではない」。教団の長はそう宣言した。それでも、ノートロムはこそこそと逃げたりしなかった。試験の日に入ると、彼は自分を笑った若き魔術師たちを倒したのだ。指導者たちは重要なことを学んだ。魔術を使えないことは、すべてに勝る魔術になる、と。ノートロムは一度の戦闘で級友たちを一人ずつ黙らせ、倒した。こうして彼は「エオル・ドライアス」のチャンピオンとなり、予言を現実のものとしたのだった。" "npc_dota_hero_obsidian_destroyer_bio" "尊大で高圧的な種族に属するハービンジャーは、深淵とこの世界の境にある監視所で唯一生き残った見張りとして、ヴォイドのふちをさまよい歩く。彼はアウトワールドの透明で峻厳な地から、警戒を緩めることなく延々と天を見つめ、星の向こうにある底知れぬ夜に乱れが生じないか目を凝らしていた。輝かしく複雑な彼の知性に深く刷り込まれているのは、予言にも似た共鳴のリズムだ。それは暗い音楽で、創造のふちの向こうでいつか悪が目覚め、こちらの世界に注意を向けることを示唆している。警戒に集中していたアウトワールド・デストロイヤーは、太陽に近い場所での出来事にほとんど注意を向けていなかった。しかし、エンシェントたちの騒ぐ声とそこに育つ脅威を感じ取り、彼は翼を広げると、太陽に向かって飛んだ。戦場へ向かうためだ。この世界の予言におけるハービンジャーの立ち位置ははっきりしていない。彼は凶兆とされている。しかし、彼がやってくるというだけで十分に凶事なのである。 " "npc_dota_hero_lycan_bio" "ベインハロウは古きスロム王国に領地を持つ最高位の貴族、アンブリー家に生まれた。「フォール」よりも前、国王は行き過ぎた欲求を見せ始め、宮廷には多くの妖術師やペテン師が居つくようになった。アンブリー家は国王の強欲に対して反対の声を上げた最初の一族であった。これ以上の忠誠や忠義を尽くすつもりはないと、一家は六千の兵を首都に送りこんだが、兵たちは背信者の大粛清により次々と倒れた。「王の首を狙うなら、王の頭を落とせ」。古くからの真理にはそう言われるだけの根拠があったのだ。

裏切りに怒りを爆発させた国王は、アンブリー家の血筋の者たちをことごとく処刑した。ただし、家長とその一番下の息子、ベインハロウを除いて。宮廷に集められた貴族たちの前で、地位を失った家長は豪奢な大理石の床で鎖につながれた。王はアンブリー家の息子をオオカミに変身させよと魔術師に命じた。オオカミになった息子に家長である父を食わせるつもりだった。「やれ」と王は言った。「さすればアンブリー卿も裏切りというものを理解するだろう」。強力な魔術をかけられ、少年は変身した。しかし、体は変わったが心はそのままだった。彼はむき出しにされた父の首には目もくれず、周囲にいた調教師たちに嚙みつき、引き裂いたのだ。王の騎士たちもその牙に倒れ、残った者たちがなんとかオオカミを夜の闇に放り出した。アンブリー卿は鎖につながれたまま笑っていた。王はそんな彼を剣で貫いたのだった。地位を失ったアンブリー家の跡継ぎたるベインハロウは、ライカンの姿でさまよっている。半分は戦士、半分はオオカミである彼は、失ったものすべてへの正義を探している。" "npc_dota_hero_lone_druid_bio" "歴史の最初の一頁が綴られるよりもはるか昔、そこにはすでにドルイドの熊一門があった。賢明かつ公正な彼らが身を捧げていたのは、自然の秩序を理解するための探究だ。自然界の一大勢力はこれを見て、一門の中からもっとも博識な者を探していた。一門の最高法官かつ予見者であった賢き老シィラが同族のために名乗りを上げると、種が与えられた。種にはこう書かれていた。「世界がすべて闇に覆われ、文明が消え去り、長年の果てに世界が終わりなき砂に吞まれたら、この種を植えよ」。

信頼を得たシィラには、老いというものが遠のき、気力が回復したように感じられた。大量の知識が頭になだれ込んできた。集中すれば自分の意思そのものを現実に投影でき、自分の姿を変えることもできた。しかし、小声で交わされるうわさや残酷な風説に乗って種とその力に関する話は広まり、熊一門への戦争が仕掛けられる事態になった。シィラの一家が代々暮らした故郷は焼かれ、彼は責任を負って荒野に飛び出したのだった。

年月が経ち、熊一門の時代とその神話は忘れ去られた。シィラと種も、熊一門と共にあった驚異の文明の数々も忘れ去られた。何千年もの間、シィラは待っていたのだ。神々からの 言葉を、戦の止まない世界に平和が訪れるのを、放浪と隠遁の身ですべての物事が終わり、神聖な責務の結末が来るのを待っていたのだ。彼の目的を脅かそうとするものがあれば、それがなんであれ立ち向かい、破壊できるよう、準備を整えながら。" "npc_dota_hero_brewmaster_bio" "嘆き山の奥深く、廃墟となった都市の下にある谷では、古きオヨ教団が何百年にもわたって幻想の儀式を行い、盛大な酒の祭典で精神界と交流してきた。マンギクスという名の若者は、天界人たる父と地上の母の元に生まれ、はじめて両方の血筋の才能を受け継ぐ者となった。彼は教団の大指導者たちの中で訓練を受け、懸命に酒浸りになりながら、ブリューマスターの称号に挑戦する権利を得た。麦芽酒の醸造を担う一派の中では最も誉れ高い称号だ。

審査は飲み比べと戦闘を合わせたようなもので、マンギクスは九日間にわたって酔っ払い、長老と戦った。九夜の間、マンギクスはよろめいて千鳥足で、バタバタと音を立てながら攻撃を繰り出した。最後には長老が酔いから感覚を失って倒れ、新しいブリューマスターが誕生した。若きブリューマスターは、オヨの先祖の力を得て棍棒を振るい、精神界の先祖を頼りとして魔術を用いる。これまでのブリューマスターと同じく、マンギクスもある一つの使命のために送り出された。彼は放浪し、飲酒を通じて蒙をひらき、古い時代にあった精神界の分離に対する答えを得ようとしている。精神界と物質界を再び結びつける思考を得ること、それが彼の願いなのだ。" "npc_dota_hero_shadow_demon_bio" "この世界に堂々と出入りできる支配層デーモンのうち、ドゥームは地上の者たちや下級精霊の仲間たちにほとんど関心を持たず、シャドウフィーンドはもっぱら収集のために通り過ぎるだけである。とはいえ、シャドウデーモンは物質界にいつも深い関心を寄せている。その様子はまるで、このザラザラした次元のつながりを支配することがあらゆる世界を支配するカギになるとでも考えているかのようだ。

シャドウデーモンを初めて召喚したのは二流の魔術師だった。シャドウデーモンはどんな願いでも聞いてやり、徐々にその力を印象付けていった。やがて彼は偉大な悪魔学者たちからの注目を集め、学者を通じて大勢の領主や暴君、独裁者、密教の導師ともつながりを持った。皆、世俗で力を保つために魔術に頼る者たちだ。シャドウデーモンのあまりに華麗な策略により、召喚者たちは自分こそが使役者であり、彼をしもべだと考えていた。ところが、シャドウデーモンの方こそが召喚者たちの自我を蝕み、心を乗っ取っていたのだ。結局、教団の者たちはほとんどが、彼の悪意を実行するための操り人形になった。

シャドウデーモンの次の一手が何になるはずであったのかは、想像の域を出ない。この頃、シャドウフィーンドのネヴァーモアは特別不快な魂を口にし、その中身がシャドウデーモンの息のかかった汚らわしいものだったことに気づく。クーデターの計画が進行中であり、アンブラル協定による均衡が崩されようとしていることを危ぶんだドゥームとシャドウフィーンドは束の間手を組み、急速に拡大していた教団を潰そうと決める。途方もなく強力な呪文を組み合わせ、彼らはシャドウデーモンが何百年も辛抱強く築いてきた計画を打ち砕いた。教団は壊滅し、その構成員は皆、真っ赤な肉塊となった。残ったのは小さなデーモンの翳りだけだ。不死であり、完全には消滅しないこの悪の塵は、シャドウデーモンが次の計画の種とするには十分だった。彼は再び数百年をかけて、徐々に仲間を集めていった。

どんなに小さくとも翳りを帯びたものは汚れ、その影響は次第に大きくなる。汚れた混沌はやがて集結し、組織となり、協力者となってシャドウデーモンに体を与えた。以前の体よりも強いものだった。今や完全な姿になった彼と、どこまでも続く支配力を得るという計画には、以前のような弱点もない。純粋な敵意と悪意だけを持ち、森羅万象への脅威となるような者に、この世界での居場所が与えられようはずもないが… それでも、シャドウデーモンの支持者は増えていくばかりだ。 " "npc_dota_hero_chaos_knight_bio" "いくつもの世界で無数の戦火を戦い抜いてきたカオスナイトは、宇宙の基本法則が知覚的な表現を持つはるか上流の次元の生まれだ。古きファンダメンタルズの中で、彼は最年長で、精力的に「ザ・ライト」と呼ばれる者を絶えず探している。遠い昔、ザ・ライトは神との最初の契約に反抗して、始祖の次元を飛び出したのだ。カオスナイトは次元から次元へと移動し、どんな場所であろうとザ・ライトを消そうと追っている。カオスナイトは数え切れないほどザ・ライトの居場所を嗅ぎつけたが、その度に彼は別の次元へと姿をくらましてしまう。捜索はまたしてもやり直しだ。

カオスナイトがまたがるのはアルマゲドンという名の騎乗種だ。戦闘とあらば狂乱して飛び込み、宇宙の混乱を力の源とする。彼は混沌が具現化した存在で、必要とされれば別次元の自分を呼び出し、共に戦いに身を投じる。自然の力のごとく、彼らは誰にも止められない。この世界から最後の「ザ・ライト」を消滅させるまで、彼らの捜索は終わらない。カオスナイトが乗りつけるところには、死があるのだ。" "npc_dota_hero_ogre_magi_bio" "一般的なオーガは「袋に入れたハンマーと同じくらい役に立たない」とよく言われる。自然の状態では、オーガには何の能力も判断力もない。身にまとうのは汚れだけで、野垂れ死んだ動物を食べたとき、たまたまその皮を被るくらいが彼らにとっては関の山である。社交性もなく、大岩や切り株を同族と間違えて好意を寄せることも少なくない (だから子どもの数が少ないのだろう)。しかし、一世代に一人ほど、恵みを受けた子どもが生まれる。二つ頭のオーガ・マギだ。伝統に従ってそのようなオーガにはアグロン・ストーンブレイクという名が与えられる。彼らの歴史において初めてにしておそらく唯一の賢者だったオーガの名だ。

二つの頭があってようやく、オーガ・マギは他の生物なら一つの頭で事足りることをできるようになる。そうは言っても論戦には勝てないが (二つの頭同士でも)、オーガ・マギは「ダムラック」と呼ばれるすばらしい力を持っている。敵や過酷な天候、自活能力の欠如をものともせずにオーガを栄えさせる、幸運の力だ。それはまるで、悲しいほど無能な種を不憫に思った幸運の女神が、自身の翼でオーガ・マギを守っているかのようにも思える。女神を誰が責められようか。それほどまでにオーガは哀れだ。" "npc_dota_hero_treant_bio" "はるか西、オーグリー谷の先にある山々には、古の力の残滓がある。深い森の奥に、不気味なエネルギーの泉があるのだ。この森で育つものは奇妙だと言われている。自然の力にとっては神聖な場所で、誰にも知られぬよう隠されており、罠や脅威も多い。なんでも食べる草、交雑した動物、毒の花などがあるが、何よりも獰猛なのはトレントの守護者たちだ。

彼らは巨体で老いることがなく、この危険な森の平穏を守る役目を負っている。理由なく森を侵犯する者、森の秘密を暴こうとする者を許さない。有史以前から彼らは神聖な森の番人で、当時は外の世界の変化をかすかに気にしていただけだった。しかし、この手つかずの森に気づく者が現れ始め、冬が終わるたびにそのような者たちはますます手荒になっていった。彼らは伐採の道具や火のついた物を手にやって来た。トレントたちは考える。このか弱く熱心な者たちは何者だ? 緑の原野だった世界は今、どうなっているのだ? 疑問と疑念の日々が来ては去り、幾千もの夏が長い伝統の検討に費やされる一方で、外の世界では死者が増え、土の肥やしとなっていた。

成熟したトレントたちが発言を終えるころには、好奇心が警戒心に勝った。彼らは守護者を一人、外の世界に送り出し、氷河が再び生じるまで旅をさせることを決定した。変わりゆく世界と生物を観察し、神聖な森を脅かす未知の危険がないかどうかを確かめるために。" "npc_dota_hero_meepo_bio" "「人生とは何かと問われれば、頼れるのは伝手と手持ちの札だけだ、と答えるね。リフトシャドウ遺跡に住んでいたら、食べ物を手に入れることさえ一筋縄じゃいかない。だから、無駄なことはやめて、そこらをあさり、自分の強みを知っておかなきゃならない。獣に殺されることだってあるから、弱いヤツは罠にはめ、強いヤツからは逃げるのが肝心だ。良い面もあるぜ。遺跡には歴史がある。一部のヤツらにとっちゃ、歴史ってのは価値がある。昔は城があったんだ。闇の儀式をやってたらしい。悪いコトだ。その儀式を生き延びたら、水晶を砕き、魂をそれぞれのかけらに分割するそうだ。そうだ、ヤツら、芸術の才能があったんだぜ! 彫刻とかな。教えてやるよ。時々、そういう古い彫像につまづくことがある。それをカバンいっぱいに持ち帰って、町で売ってみな。数週間は働かずに済むぜ。運が良けりゃ、リフトシャドウの水晶が見つかるかもな。鑑定書を付けてもらって、買い手を探すといい。情報通は、こういう物を死ぬほど欲しがってるヤツを知ってる。買い手が見つからなくても、魔導師が町に来たときに売ってやれ。ヤツらも好きなんだ。だが、水晶の扱いには気を付けな。砕いちまったら悲惨だぞ。」" "npc_dota_hero_visage_bio" "「狭き迷宮」の門には、ガーゴイルたちがあざ笑うかのようにたたずんでいる。未来への道は、彼らの視線の下にある。獣であれ鳥であれ、人であれモンスターであれ、死を迎え、その先への旅を望んだあらゆる生物は、いつかガーゴイルの視線にさらされなければならない。つながれぬ魂は、死のベールをくぐり抜ける旅を途中でやめることはできない。よい機会と悪知恵や狡猾さに恵まれれば、一部の安らがぬ魂は地獄や天国から逃げ出す。そんな時、永遠の魂ネクロリックが姿を持って恐ろしいガーゴイル「ヴィサージュ」となり、彼らを捕まえるために送り出される。冷酷で無駄がなく、死や疲労などの制限を受けないヴィサージュは、容赦も際限もなく獲物を追い、逃亡した魂の隠れ家となりそうな場所まで壊すことをいとわない。死後の世界の法則を侮る者は後を絶たないかもしれない。そうして死者はよみがえるのだが、ヴィサージュがそれを見つけ出し、然るべき場所に連れ帰るのは時間の問題だ。" "npc_dota_hero_undying_bio" "名を失ってからどれくらいの時が経ったのだろうか。原型をとどめない彼の精神には分からない。

鎧と旗、それに厳しい表情の仲間が横を馬で駆けていたのはかすかに思い出せる。覚えているのはある戦いのことだ。青白い手が彼を馬の鞍から突き落としたときの、痛みと不安。大口を開けた亡神の穴に仲間たちとともに投げ込まれたときの恐怖、葬送歌が聞こえ、己の存在が無になったときの恐怖を覚えている。その暗闇の中で、時間は溶けて消えた。思考も、正気もどこかに行ってしまった。しかし、空腹だけは去らなかった。彼らは割れた爪を、欠けた歯をお互いに突き立てた。その時だ。最初は遠かった。知覚の隅で小さな音が聞こえた。音は徐々に大きくなり、逃れられず、止むこともないコーラスになった。やがてそれは音の壁になって彼の脳内に響き渡り、何も考えられなくさせた。葬送歌に飲み込まれながら、彼は亡神による抹殺を受け入れた。しかし、彼に向けられたのは破壊ではなかった。亡神は戦を求めた。虚無の腹の中で、彼には新しい目的が与えられた。世界に葬送歌を広め、安らがぬ死者を集めて生者に対抗させるのだ。彼は亡神の使者「アンダイイング」となり、体が衰えようともよみがえり、朽ちてはまたよみがえった。終わりなき死の道を行くため、葬送歌を絶やさぬために。" "npc_dota_hero_rubick_bio" "魔法使いなら誰でも呪文の一つや二つは唱えられるものだ。魔術師になれるほど研究を続ければ、さらにいくつか覚えられるかもしれない。しかし、魔導師と呼ばれるに至るのはもっとも優秀な者たちだけである。だが共同体意識があるからといって、皆が礼を重んじ切磋琢磨するとは限らない。これはあらゆる魔術師界隈に共通することだ。

決闘士かつ学者としてすでに魔術師の世界で名を知られていたルビックだったが、自分が魔導師の器だとは微塵も思っていなかった。しかし、七度目に暗殺されかけた時、その考えは変わった。暗殺者集団の十二人目を高いバルコニーからやすやすと放り投げながら、ルビックは自分の命を狙う試みが想像力を欠くようになったことを認識した。かつては指を鳴らされたり火の手で妨害されたりしただけで足取りが弾んだものだが、そんなことにはもう驚かなくなってしまった。もっと手ごたえが欲しい。こうして彼は戦闘用の仮面を着け、魔術師としてのし上がると決めた者なら誰でもするであろうことをした。ルビックは魔導師を一人殺すと宣言した。

一人の魔導師に対して宣戦布告することは魔導師全員を相手にすることだと、ルビックはすぐに気づいた。彼らは大挙してやって来た。どの魔導師の呪文からもほとばしるエネルギーが感じられ、攻撃はいずれも計算されつくした会心の一撃だった。しかし、ルビックの敵が誰も予想していなかったことが起きた。各々の術がお互いを攻撃していたのだ。渦巻く魔術の中で、ルビックはほくそ笑んだ。彼は巧妙に魔導師の術を再現し、別の魔導師にそれを放った。ルビックに対抗しようと手を組んだ者たちの間に混乱が生まれた。裏切りを咎める声が飛び交い始め、魔導師たちは黒幕が誰かなど疑いもせず、やがてお互いを攻撃するようになった。

ようやく戦闘が終わった時、彼らは焼け焦げ、凍り付き、びしょ濡れで、切り刻まれ、貫かれていた。味方の術によって死んだのは一人ではなかった。ルビックは超然としていた。体は痛んだが、その週のお祭り騒ぎには満足していた。彼が機密評議会に魔導師就任を願い出たとき、反論する力のある者はいなかった。そして「虚ろの十一導師」は全会一致で、ルビックに大魔導師の称号を与えたのだった。" "npc_dota_hero_disruptor_bio" "風の吹き荒れるドルードの大草原の高地には、ディスラプターと呼ばれる才能豊かな若き嵐起こしがおり、彼は夏のスコールの謎を初めて解き明かした。無数の台地がつらなる高地に住まうオグロディ族は、季節性の嵐と南にある王国からの侵略に常に悩まされ、数世紀にわたって苦しい生活を続けていた。オグロディはかつて大文明を築き滅んだ部族の生き残りである。彼らの嵐起こしの技は不可解で、失われた知識の断片を完全には理解できないながらもつぎはぎして復活させたものだった。高地に住む者にとって、天候は信仰にも等しいものである。それは命を与え、また、奪うものとして崇拝されている。しかし、命の糧となる雨をもたらす雷嵐には代償がつきものだ。嵐が去ると、黒焦げになって煙を上げる死体がいくつも残される。

同族の中でも体の小さいディスラプターは、大胆不敵で飽くなき好奇心を持っていた。経験が少なくストライダーも持っていなかった若いころは、古い遺跡の街を探索し、崩れて朽ちかけた図書館をいくつも巡ったり、錆びついた工場で宝探しをしたりするのが好きだった。さまざまな物を見つけては、仲間のところに持ち帰っていた。古いコイルの設計を取り入れることで、彼は電気差動装置の力を操れるようになった。いつでも雷を呼び出せる機械だ。魔法のようでも職人技のようでもあるディスラプターのコイルは、その発光体部分に生死を分ける力を宿す。彼はその力を、南方の侵入者たちや、古きオグロディの地に立ち入る者たちに向けて解き放つのだ。" "npc_dota_hero_nyx_assassin_bio" "ウルティミールの書庫の奥深く、ドラゴン分類学の論文と翻訳不可能な呪文書の間には、珍しい昆虫に関する古い本がある。学者たちによって編まれたその本が論じるのは、狂信スカラベのテレパシー能力だ。狂信スカラベは七層の世界を通しても類を見ない能力を持つ、社会性のある昆虫だ。

ニクス・アサシンはコロニーの他の仲間たちとは違っていた。スカラベの労働者階級に多い変態は思考の遅さや鈍い付属器を伴うものだが、彼の変態はニクスの恩寵を受けた特別なものだった。彼は大勢の中から選ばれ、女神自身が、自らの体液から精製した聖油を彼に注いだのだった。女王の私室の暗き祝福を生き延びる者は多くないが、彼は鋼の精神とダガーのような爪で暗がりから立ち上がった。剃刀のように鋭い顎は空気を裂き、その思考は周囲の者たちに直接注ぎ込まれる。すべての狂信スカラベの中から、彼だけが至高の使命を託されたのだ。変態の後、彼はニクスの恩寵によって生まれ変わり、ただ一つの目的のために力を備えるようになった。女神の名のもとに殺すという目的のために。" "npc_dota_hero_naga_siren_bio" "名高いスリザリーンガードの間で幾度となく繰り返される、戦闘前の誓いがある。「スリザリーンよ、しくじるなかれ」。実のところ、この言葉は誓いの言葉でもあり、強制力のある契約でもある。任務を果たせなかった者は部隊から追放されるのだ。しくじるということは、スリザリーンでなくなるということに等しい。

何年にもわたってナーガ族の大隊を率いてきたスリシスは、同族の誰よりも尊敬を集めていた。彼女の最大の武器はその恐ろしい声だった。力強く、しなやかで、蛇のような声。その声をもって彼女は深淵の者たちと水底の都市の富を守った。しかしクレイの戦いの最終盤で、彼女の部隊はレビアントの略奪部隊に撃退されてしまう。略奪部隊は彼らの神メイルローンに捧げる物を探していたのだった。長時間にわたる猛襲の後、水底の大広間からいくつもの死体が取り除かれると、宝物個から宝石の付いた聖杯が失われていることが判明した。スリシスの部隊にいた100人ほどの兵士のうち、生き残ったのは一握りだったが、彼らの勇敢さや犠牲はさほど意味を持たなかった。重要なのは、宝物が奪われたことだった。名誉が打ち砕かれたのだ。この結果、ナーガ・サイレンは追放され、奪われた聖杯を探すことになった。彼女が自身の体重の100倍もの黄金を宝物庫に納めようとも、奪われた聖杯を取り返すまで帰還は許されない。失った栄誉より重い黄金などないのだ。" "npc_dota_hero_keeper_of_the_light_bio" "青白い馬にまたがり、曇らぬ太陽の輝きを放つ者。それがキーパー・オブ・ライトである。エザロルは遠い昔にファンダメンタルの次元を飛び出し、大いなる原始の調和の中で自分と結ばれていた他の古きエネルギーから分離した。彼は宇宙が始まるときに知覚を得たエネルギーであり、今ではあらゆる次元で同時に活動する。彼は追いすがる混沌の一歩先を行き、輝く杖の先にその能力を宿している。本来の彼は、かろうじて馬上にとどまる、おぼつかない足取りの老人といううわべに隠されている。しかし、混沌による困難や闇の力に直面すると、彼の原始の光が輝きを放ち、真の力が解放される。そうして再び、エザロルは圧倒的なエネルギー体に変貌するのだ。" "npc_dota_hero_wisp_bio" "イオはあらゆる場所に存在し、あらゆるものに宿っている。敵からは大いなる破壊者と非難され、学者たちからは輝く天の目と崇拝されるこの不思議な生命力のウィスプは、あらゆる次元を同時に満たし、そのほんの一部が物質界をいつでも飛びまわっている。

闇と光という偉大なるふたごの騎士と同じく、歴史の中にその真実が失われたまた別の古き旅人と同じく、イオ・ザ・ウィスプは宇宙の基礎を成す。時間そのものよりも古くからある存在で、定命の者たちには理解の及ばない世界から来た旅人だ。イオは物質界にある引力と反発力をすべて集めたものに等しく、存在を成立せしめる電荷が知覚を得て顕現したものである。物質界でイオの存在に触れられるのは、この電子の通り道に制御された歪みが生じるときだけなのだ。善き意志を持ち、協力をいとわないイオは、味方の力を強化できるように不思議な磁力を他者に結び付ける。動機は不明で想像を絶する力を持ち、物質界を自在に動き回る、宇宙の神秘を体現する存在だ。" "npc_dota_hero_slark_bio" "陸の上の者たちにはほとんど知られていないが、ダークリーフは海の者たちの中でも仲間に対する罪を犯した極悪人だけが送られる水中の牢獄である。有刺鉄線に囲まれたその迷宮には、残忍なスリザリーン、不実な深淵の者たち、ソシオパスのメラントたちが入れられている。ウナギが見回り巨大なイソギンチャクに取り囲まれたこの薄暗い牢獄で生きていけるのは、凶暴な者たちだけだ。なぜここに放り込まれたのかは分からないが、スラークは同族に会うことも親切にされることもなく、牢獄で半生を過ごしてきた。誰も信じず、人目を忍ぶ技と無情さを武器に、考えや計画を誰にも話すことなく生きてきたのだ。かの悪名高きダークリーフの十二人が、最終的には失敗に終わった脱出計画を立てた時、彼らはそれをまったく他者に漏らさず、嗅ぎつけた者たちを皆殺しにした。しかし、スラークはどういうわけかその計画を知り、その上計画に一枚噛んだ。脱出のさなかに、十二人のうち十人が死んだ。残りの二人は捕まり、ダークリーフに連れ戻されたのち、他の囚人たちの娯楽として公開処刑された。だが、陰の十三人目、スラークはその騒動に乗じて逃げ、捕まることはなかった。シェイドショアの南にある食肉マングローブ林に隠れ住むスラークは、今でもダークリーフからの脱出に成功した唯一の脱獄囚である。" "npc_dota_hero_medusa_bio" "美は力である。この言葉は、ゴルゴン美人三姉妹の末娘であり、もっとも美しいメデューサの慰めだった。海の女神の下に生まれた彼女は、三姉妹の中で唯一、不死ではなかったからだ。しかし、その言葉が慰めになったのも、顔を隠した襲撃者たちがゴルゴンの世界にやってきて、不死の姉二人を世界から奪ってしまうまでだった。彼らはゴルゴンの美しさにも涙にも心を動かされなかった。侵入者たちはメデューサも捕らえたが、顔に嫌悪を浮かべて彼女を解放した。「こいつは定命の臭いがする。死ぬ奴は使えない」。屈辱を受け激怒したメデューサは母の神殿に逃げ込み、女神の前に身を投げ出すと、涙ながらに願った。「永遠の命を授けてくれなかったのなら、せめて――せめて力を! 力があれば、姉さんたちの救出と非道な行いへの復讐にこの命を捧げられる!」女神は長い時間をかけて考え込んでいたが、娘の願いを聞き入れ、メデューサの美貌と引き換えに恐るべき力を、そしてそれに見合う顔と姿を与えた。この選択をメデューサが後悔したことは一瞬たりともない。力こそが唯一の持つべき美なのだと、彼女は考えている。世界を変えられるのは、力だけなのだから。" "npc_dota_hero_troll_warlord_bio" "トロールを怒らせるのは簡単だ。短気で議論の好きなこの種は、論争と敵対こそが生きる糧で、議論のために声を荒げる機会を逃さない。オスのトロールは女族長の住居の地下にある部屋で育ち、特にこれといった活動はせず、食べ、遊び暮らす。成年以降もそこで過ごす者も多いが、族長はそんな彼らにも食料を与えてやる。若いトロールがようやくその地下室から出る時が来ると、彼らは同族で集まり、あらゆることに不満を垂れながら旅をする、ならず者集団になるのである。

トロールは議論好きとは言え、付き合いづらいという理由で仲間の輪から追い出される者は稀である。だが、ジャーラカルにとってはそれが運命だったようだ。彼はホーヴェン出身のトロールである。あまりにも期待を裏切り、辛辣で周りを苛立たせる性質をした彼は、他のトロールからしゃくに障るヤツだと思われていた。ある時、襲撃後の分け前を一人だけ多く求めたため、ついに仲間が彼を見限った。仲間たちはジャーラカルに向くと棍棒を打ち付け、野営地から追い出した。追放されたことに怒ったジャーラカルは翌日、武装して野営地に戻ると、仲間たちを一人ずつ、みんな殺してしまった。そして、血の誓いを立てたのだ。「これからは自分のために戦う」。こうしてジャーラカルはトロール・ウォーロードとして放浪するようになった。憎悪と怒りに満ちた、一人だけの軍の尊大な司令官だ。" "npc_dota_hero_centaur_bio" "ケンタウロスの往く道は死体で覆われると言われている。ウォーランナーと呼ばれるケンタウロスにとって、その道は長き道である。部外者からは、ドルードの四本脚の種族は無知で野蛮な生き物だと誤解されることが多い。彼らは文字を持たない。絵を描く習慣も、体系的な音楽も、明確に宗教と言えるものもない。ケンタウロスにとっては戦闘こそが意思を表す手段であり、自己表現の方法だ。殺戮が芸術と言えるなら、ウォーランナーのブラッドワーデンはもっとも卓越した芸術家ということになるだろう。ケンタウロスが何千年にもわたって腕を競い合ってきた闘技場オメクシーで、彼は頭角を現した。その名声が広まるにつれ、彼の戦いぶりをみようと遠くからも見物人が訪れるようになっていた。いつも一番に闘技場に入り、最後まで残っているブラッドワーデンが、血を飛び散らせ、赤く染まった剣を振るたびに奏でる曲は、どれも最高傑作と言ってよかった。それは鋼に血で書かれた詩であり、殺戮の場の白砂に入り組んだ模様を描いた。

ブラッドワーデンは次々と戦士を倒し、闘技場を沸かせた。誰もが自らの名を呼ぶ歓声の中、自分は並ぶ者のない孤独な存在になったのだと、彼は気づいた。オメクシーのチャンピオンベルトを与えられ、それが体に巻かれたとき、死の芸術家ブラッドワーデンが感じていたのはむなしさだった。挑戦できる相手のいない戦士に意味はあるのだろうか。その日、偉大なるそのケンタウロスは、新たな目標を胸に闘技場を飛び出した。ケンタウロスにとって、彼は闘技場に足を踏み入れた中でもっとも卓越した戦士だ。彼は今、命を持つ者の中で自分がもっとも卓越していることを証明しようとしている。" "npc_dota_hero_magnataur_bio" "ヨエラク山の鍛冶匠たちはある一点について、口をそろえて言う。「マグノセロスの角に優る素材はない」。誉れ高い角の中でも、もっとも大きく鋭い角を持つ者。それがマグナスだ。半世代の間、マグナスは同族のこの秘宝を奪おうとやってくる狩人たちをやすやすとその角で串刺しにしてきた。蹄と角を赤く染めてマグナスが同族のもとに戻るたび、女族長は彼と仲間たちに山の北側に隠れるように促した。しかし、防衛し損なったことのないマグナスはそんな族長をあざけって笑うのだった。マグノセロスは安泰だ。偶然を信じず、その考えを変えることもないマグノセロスのマグナスは、そう決めつけていた。

しかしヨエラク山の突然の噴火により、マグノセロスの半分が炎に呑まれ灰になってしまうに至り、マグナスは考えを変えた。生存者たちは北へと追いやられたものの、弓と剣を手にした狩人の大集団による妨害によって行く手を阻まれる。マグナスにとってはまたとない機会だった。彼は好戦的な仲間を率いて敵に突撃し、背後で火を噴くヨエラク山のごとき凶暴さで戦った。一方、年長者や母親と子どもたちは、どこかへ吞み込まれてしまったかのように姿を消した。次に起こったことについて、鍛冶匠たちの意見は割れている。

ある者が言うには、マグナスは後に同族のもとに戻ったらしい。しかし一方で、重傷を負い族長の隣で息を引き取ったとも言われている。どちらの説も真実ではない。マグナスは同族のもとに戻ると誓ったものの… まずは、ヨエラク山の噴火を起こした者を探し出し、その角で突き刺してくると旅に出たのだ。偶然を信じない、それがマグノセロスである。" "npc_dota_hero_shredder_bio" "リズラックの頭には叫び声が響いていた。一心不乱にレンチを回し、ネジを締め、組み立て、刻み、鉄を鍛えて作業した。眠れず、組み立てることだけが彼に許された行動だった。叔父の作業場にこもってから何か月も経ち、リズラックの作品は完成に近づいていた。彼は腰をさすると、焦点の定まらない目を閉じた。オーグリー湾の凪いだ海面に一面の花畑が浮かんでいる。花畑は爆発して花粉の雲となり、肺に入り込んで多くの命を奪った。息苦しさにリズラックは飛び起きた。作業場には砥石のリズミカルな音が何時間も続いた。巨大な剣を砥ぐ彼の心には、巻き付くつるが隣人の首を絞め、家々を包み込む光景が見えていた。海水が街の壁を越えて入り込む激しい恐怖に比べれば、オーグリー湾の洪水などなんでもなかった。

しかし、鋸スーツがあれば強くなれるし安全だとリズラックは考えた。彼はしおれる心が恐怖の力に呑まれる前に、わずかでも希望を持つことにしたのだ。枝、樹皮、血。街が倒壊したとき、リズラックは動く木々から逃げ、戦い、倒した。木々は門を壊し、街になだれ込んだ。オーグリー湾でかき集められた防衛軍の生き残りは押し潰され、打ち付けられ、踏みつけられた。逃げ出した者たちもその後を追われた。混乱した沈黙の中でリズラックはスーツのアームから垂れた太い鎖をほどき、震える手で連結部を確認し、わななく指をアームの先に取り付けられた爪に走らせた。鋸スーツは完成していた。

震える手でその機械を目覚めさせると、リズラックは恐怖に駆られた。この先に待つものと、心を鎮められるようになるに向き合わなければならないものへの恐怖だ。鋸スーツが身震いして目覚めたとき、彼はこの恐怖に立ち向かわなければならないことを理解していた。それが決して好きになれない感情だとしても。" "npc_dota_hero_bristleback_bio" "戦いに決して背を向けることのないリグワールは、近づくことのできる喧嘩屋たちの中でも体が大きく卑劣な者たちを相手にすることで知られていた。酔っ払いたちから「ブリッスルバック」とあだ名された彼は、スロムとエルゼの間の道沿いにあるあらゆる酒場の奥での喧嘩に首を突っ込むのが常だった。やがて、その行動が用心棒を探していた酒場の主人の目に留まる。わずかな酒を報酬に、ブリッスルバックはツケを回収し、酒場の秩序を保ち、たまには酔っ払いに痛い目を見せる役目を担った。

楽しい夜を過ごし、ツケを払わない常連客と自分の肝臓の両方と同じだけの身体的危害が下されたとき、彼はついに好敵手と出会う。「なんとも不快な牙だ」、ろれつの回らない口調でそう声をかけた相手は北部の荒野からやってきた、未払いのツケのある体格のよい客だった。それから何時間にもわたって喧嘩が続いた。多くの客がその輪に加わった。椅子がどれもガタガタになったあげく、最後にはありえないことが起きた。ツケが支払われなかったのだ。その後の数週間でブリッスルバックの傷は癒え、体の針も生えそろったが、用心棒としての面目は失われたままだった。払われなかったツケを自分の財布から支払うと、彼はあの北部から来た好敵手を追い、必ずこの損失を取り戻すと誓った。そして、今までしたことのなかったことをした。体を鍛えたのだ。そうするうちに、驚くべき発見もあった。彼は体の針を逆立てながら笑みをこぼした。戦いでは「背を向ける」ことこそ、勝利のカギなのかもしれない。" "npc_dota_hero_tusk_bio" "それは記憶に残る大乱闘だった。そこに立っていたのはユミル・ザ・タスク。「バリアの恐怖」とも「コバルトの雪玉」とも呼ばれる、公正な喧嘩でブリッスル・ブルーザーを下した唯一の闘士で、今やウルフズデンの酒場で勝ち残った最後の一人だった。最初は誰が一番強いのかをめぐる単純な酒場での賭けだったのだが、最後には酒場中のボトルやジョッキ、椅子が壊れ、その破片の上で4人の常連客、1人の鍛冶屋、フロスト旅団の最上位の戦士6人がのたうち回る事態になった。タスクは自分のグラスを掲げ、自らの勝利を得意げに祝って一気に酒をあおったのだった。

敗者たちが意識を取り戻すやいなや、次は倍賭けさせろとわめく声が上がった。タスクはこの成り行きを喜んだが、先の喧嘩に優る賭けになるとは誰も思わなかった。酒場が負った損害と再びの大乱闘を恐れた店主に、ある考えが浮かんだ。ユミルは戦いの技術を持っていたものの、本物の戦闘には参加したことがなく、戦場の見境のない死や混乱といったものを経験したこともなかった。店主はユミルに賭けを持ちかけた。見つかる限り一番大きな戦いに参加して、生き延び、選んだ陣営を勝たせてみてはどうか、と。賭けの賞金は? 次の酒は店のおごりだ。" "npc_dota_hero_skywrath_mage_bio" "ガストリ・アイリーの宮廷で高い地位にある魔導師のドラゴナスは、苦しい日々を送っている。「イバラの巣」に座った者は誰であれ守ると生まれながらに誓ったドラゴナスだったが、現在のスカイラスの女王を心から憎んでいるからだ。名門の出で若い彼は、スカイラスの最年長の王女であり王位継承権第一位のシェンデルザーレと気の合う友人であった。シェンデルザーレに対するドラゴナスの愛情は熱く、また揺るぎなかったが、彼が魔術研究に傾倒するにつれ、その心は難解な学問とスカイラス魔術への精通ばかりに向いていった。

神秘の力に憑りつかれたドラゴナスは、シェンデルザーレに対する裏切りの計画の兆候を見逃し、それを未然に阻止する機会を失ってしまう。宮廷が速やかで暴力的なクーデターに揺れた時、彼はようやく学問から目を離した。明らかになったのは、最愛の古い友人が失われたという事実だった。イバラの巣の座に就いたのはシェンデルザーレの非情な妹で、ドラゴナスには手の打ちようがなかった。スカイラスメイジの魔術はスカイラスの継承者の誓いを立てた守護者のみに有効なため、イバラの巣への反抗はドラゴナスが力を失うことを意味した。このため、いつか最愛の人が正当な地位を取り戻すための最善手だと信じて、彼は今までの地位にしがみつくことにした。彼の秘めた想いを知るのは女神スクリオウクだけである。この女神の魔術によりシェンデルザーレは不自由な肉体から解き放たれ、純粋な復讐のエネルギー体へと生まれ変わったのだった。

ドラゴナスは最愛の人がガストリ・アイリーで女王となることを夢見ているが、より強く願っているのはシェンデルザーレその人を復活させて、完全な姿に戻すことだ。宮廷で二枚舌を使って生きるのは、気高く優しいドラゴナスにとって苦しいことである。しかし、何よりも苦しいのは、ヴェンジフルスピリットが彼に対して抱く憎悪を想像することである。" "npc_dota_hero_abaddon_bio" "アヴェルヌスの洗礼盤は一家の力の源である。それは自然の石にできた亀裂であり、そこからは何代にもわたって予言の力が霧となって噴き出していた。大アヴェルヌス家に生まれた子どもはこの黒い霧を浴びて洗礼を受け、その土地の不思議なエネルギーとのつながりを持つことになる。子どもたちは自分が、代々受け継がれた伝統とこの世界の習慣の確固たる守護者であると信じて育つ。しかし、彼らが本当に守っているのは洗礼盤そのものだ。霧の真意は分からない。

赤ん坊のアバドンが洗礼盤で霧を浴びたとき、何かがねじれてしまったと言われた。その子の目にはすべてを見通すような光がゆらめいており、列席者をぎょっとさせただけでなく、司祭は何事かを囁いた。彼はアヴェルヌス家の他の後継者たちと同じ道をたどることを期待して育てられた。すなわち、戦争のための訓練を受け、必要とあらば一族の軍を率いて先祖伝来の土地を守ることを求められていた。しかし、アバドンは常に同胞とは一線を引いていた。他の者たちが武器の鍛錬をしていても、彼は霧のある場所での瞑想に精を出した。洗礼盤から溢れ出る蒸気で彼の体は隅々まで満たされ、その精神は屋敷の地下深くから流れ出る力と混じり合った。彼は黒い霧の怪物になっていた。

アヴェルヌス家の誰もかれもがアバドンにつらく当たった。老いも若きも責任を果たそうとしないアバドンを責めた。しかし、アバドンが戦闘に乗り込むと、その非難の声は止まる。彼らは気づいたのだ。霧の力は彼に生と死を操る能力を与えていた。それは、これまでの家長の誰一人として手に入れたことのない力だった。" "npc_dota_hero_elder_titan_bio" "「どうして世界はこの形になったのか?」そう訊ねてほしい。創造されたこの世界は、奇妙な性質を持ち、多様で雑多な生き物が暮らし、文化や伝承が受け継がれているのはなぜか。「答えはタイタンと共にある」ある者がそう囁く。

この原始の種は世界の始まりのすぐ後から、そこにいた。創造を目にしたわけではなくとも、まだ創造の残響がある時にはすでに生まれていた。宇宙の最初期のエネルギーを刻みつけられた彼らが望むのは、創造主であり続けることだった。そうするために、ハンマーで叩き、熱を加え、曲げ、吹き飛ばして、意に沿うように物質を形作ることに心を傾けた。物質が思ったよりも手ごわくはないと分かると、彼らは使っていた道具を自らに向け、心と魂を鍛えなおして、大いなる耐久性を持つ存在へと生まれ変わった。現実そのものが彼らの鍛冶作業の究極の目標となった。だが、そうするうちに誤ることもあった。大望を成そうとするとき、過ちは避けられないものだ。

今、エルダータイタンと呼ばれている者は、創造の鍛冶場で研究を重ねた革新者だ。技を磨くにあたって、もう修理できない、捨てるしかないものを彼は粉々にした。そして壊れた自分の世界の中に落ち、その魂は砕けた。彼は角ばったかけらとひびの入った面の間で、できたばかりの宇宙にある割れ目からふるい落とされた失われた断片とともに住まうことにしたのだった。こういうわけで、我々の住む世界は遠い昔に忘れられた難破船の生存者が住む、漂流者の島に似ているのだ。とはいえ、漂流者を忘れていない者が一人いる。自分自身を責めるエルダータイタンその人だ。彼は壊れた魂を直そうと、かけらを集めてつなぎ合わせようと、長い間試みている。そうすれば、我々と世界がすべて元に戻るのだと信じて。これがエルダータイタンの物語である。" "npc_dota_hero_legion_commander_bio" "それは予告もなしにやって来た。ストーンホールの街を囲む壁の中では低い振動とともに恐ろしい音が響き、暗闇から無数の獣の大群が現れ、炎と黒魔術を操って、悪しき目的のために母と少年たちを殺し、さらった。かつては強大と言われたストーンホールの軍の中で、招集に応えられるほど近くにいたのは、不屈の司令官トレスディン率いる青銅軍団だけだった。軍団は街に乗り込むと、血しぶきに汚れた路地や炎上する市場を抜け、大群衆をかきわけつつ、突如として現れた侵入者たちのもとへ向かった。街の広場には不可思議な亀裂ができており、その縁に群れのリーダーが声を轟かせていた。

深淵の大群を率いるその獣は、まわりを蝕むような光に包まれていた。光を浴びて体を腐らせ始めた軍団兵を獣が大剣で真っ二つに切り裂く。トレスディンは血に染まった剣を振り上げ、獣を見据える。獣もトレスディンの方を向き、群れの仲間たちの向こうから笑みを見せた。二人の周囲では激しく戦闘が行われていたが、彼らはお互いだけを見て激突したのだった。

剣を交わし合いながら、二人は踊るように決死の戦いを続けた。青銅軍団の兵士たちには、もはや誰も立っている者がいない。獣が剣を自分の方に向けたとき、トレスディンは前方に跳びあがった。勝算が見えた。突然、横から激しい攻撃を受けたトレスディンだったが、バランスを崩しながらも再び力を込めて剣を振る。剣は相手の刃を滑り、柄を握る獣の手に届いた。獣の手が真っ二つに切り裂かれる。火花と血が飛び散った。群れが驚いて見守る中、トレスディンはなおも手を緩めず、その剣を獣に突き立て、暴れる心臓を貫いた。咆哮に雲が割れる。獣は血と苦悶を噴き上げた。地獄へつながるポータルがゆらめき、亀裂を作っていた力は、現れた時と同じように突然消えた。残された群れの獣たちは、ストーンホールの兵士たちの前に倒れたのだった。

勝利こそしたものの、生き残った者たちが祝うべきことはほとんどなかった。街は廃墟同然で、生存者は少ない。火の手も方々に回っていた。トレスディンは戦旗を掲げ、配下の兵をかき集めた。胸に怒りをくすぶらせ、彼女は誓う。深淵の軍勢には徹底的な復讐を、復讐を邪魔する者には呪いを、と。" "npc_dota_hero_ember_spirit_bio" "ウェイリング山地のどこかには、うち棄てられたフレア要塞があると言われている。訓練場は空っぽで、中庭は草木と塵に覆われている。要塞内の封印された聖堂にある台座にはトパーズの大釜がある。大釜を満たす灰は、戦士で詩人であったシンの亡骸を燃やした薪だった。シンは三世代にわたって、ガーディアンフレイムの契約を侍祭たちに教えていた。要塞の外に待つ厳しい現実を耐える心と体を作るための経文だ。

しかし、戦士としての心得を教えるうちに敵を作ったシンは、初老の頃に殺されてしまう。信奉者たちは風と共に散らばった。どれだけ年月が経ち、世代が変わろうとも、シンの教えはかすかな囁き声や実践によって受け継がれていた。師の消えぬ遺産に心を打たれたのはバーニング・セレスティアルだ。好奇心の強い火の精粋である彼はフレア要塞に飛び込み、大釜の灰に火をつけた。燃えさしが赤らみ、そこからシンの姿が現れる。炎をまとった彼の顔は思慮深い。それは、導きを求める者たちを鍛え、教えを授け、知識の炎を広めるという決意の顔だった。" "npc_dota_hero_earth_spirit_bio" "その高地の岩山や絶壁の奥深くには、高原の採掘者たちが存在を予見していた神聖な翡翠の層がある。この希少な鉱石から、大将軍カオリンの像が彫られ、一万人分の埋葬軍石像の先頭に埋められた。その軍は職人たちが作った彫刻の兵士や聖職者、道化、軽業師などから成り、何千年にもわたって暗い地中に埋められていたのだった。

職人たちには知る由もなかったが、翡翠の層には星そのものの精神が流れていた。惑星と一体となった元素の力だ。翡翠の内部にあったその力が、彫像となって星の血の流れと切り離されたことに気づいたとき、それは千年の歳月をかけて力を溜め、自由の身になって光の中に飛び出した。こうしてアーススピリットとなったカオリンは、高地を闊歩し、星の精神のために戦っている。必要とあらば、今も土の中に抱かれているあの石像の軍を呼び寄せることもできるのだ。" "npc_dota_hero_abyssal_underlord_bio" "どんな神話も詩歌も、彼らの到来を告げてはいなかった。

地中には、まだ誰にも知られていない不思議や恐怖が眠っている。地下を這うマグマの園と焼ける根を持つ休火山の奥深くには黒曜石の街アズィヨグがあり、他に類を見ない石細工が果てしなく続く洞窟に広がる。無数の奴隷の骨が塗り込まれたハチの巣状の壁の中には、深淵の軍とその主ヴログロスがいるという。

同族の腕の立つ鍛冶師によって作られた装備とダークリフトの技を身に着けたヴログロスは、世界の間にあるねじれを通じて炎と破滅の悪意を呼び出せる。目的は権勢を拡大し、出会うものすべてを破壊するか配下にすることだ。地下の世界から手に入れられた土地はごくわずかで、そのため彼は地上に目を向けた。ヴログロスの指示により、深淵の侵略者たちの第一波が裂け目を通って進軍した。少数の軍勢は壊滅させられたが、これは地上の国々の力を測るのが目的であった。全軍が終わりなき征服への準備を整える今、ヴログロス自身も光の当たる世界へと踏み出し、彼の支配が近いことを知らしめようとしている。アンダーロードに会う者は、服従して身を捧げるか、その場で押しつぶされる運命にある。" "npc_dota_hero_phoenix_bio" "手つかずの暗闇の向こうに、番人の最初の太陽が輝いた。意識を持つ一点の光は虚空に温もりを広める運命にあったのだ。無限の時の中で、このまぶしい明かりは計り知れないエネルギーを一体化させていき、それはやがてスーパーノヴァとなってなだれをうってあふれ出した。この灼熱が親星にそっくりの子星を作り出す。星たちは明かりのない海を旅し、やがて星座を作ってとどまった。時が経てば、この星たちもスーパーノヴァの炎によって増殖するのだろう。この誕生と再誕のまばゆいサイクルは繰り返す。タイタンが伐り倒すすべての空が輝くようになるまで。

この永遠の試練によって、人々が「フェニックス」と呼ぶようになった星は崩壊した。それまでの星々と同じく、フェニックスも同胞たちの中に居場所を見つけるべく、無限の宇宙に飛び出した。しかし、輝きを失っていく老星たちが暗闇の中で慰めるものへの好奇心に若星は呑まれ、長きにわたって調査と研究を続けたのだった。分かったのは、完全なる世界でも壊れた世界でも、宇宙の影響力という果てしなく続く対立の中では、やがてさまざまな結びつきを持つ集合体が生まれるということだった。それは遠く死にゆく太陽から届く光以上の何かを求める。かくして、この太陽の申し子は星の生物の姿となり、求める者に温もりを届けようと旅を続けている。いずれは自らが太陽となる運命を受け容れるかもしれない。" "npc_dota_hero_terrorblade_bio" "テラーブレードは、同族からされも恐れられる厄介者で、略奪を好むデーモンである。デーモンロードに対しても盗みを働く彼は宇宙の偶像破壊者と言ってよく、自身の行動を縛るべき法典に則った儀礼や、七層の地獄のあらゆる法を破った。この罪によってテラーブレードはあることを学んだ。地獄にさえも地獄がある。短く容赦のない裁判が多くの死者に囲まれる中で行われ、彼はフォウルフェルに幽閉されることとなった。デーモンが同族を投獄するための裏次元である。

フォウルフェルは普通の監獄ではない。現実を暗く映し出すこの次元で、デーモンたちは自分の魂が歪んで映し出されるのを永遠に見つめていなければならない。しかし、テラーブレードはそれを苦しむどころか、最悪の自分に精通した。それは途方もない力を持ち怒り狂う略奪者の姿だった。内なる獣を支配したテラーブレードはフラクタルの獄壁を壊して飛び出した。あらゆる創造物に恐怖を降らせるつもりだ。" "npc_dota_hero_oracle_bio" "シムリの大王座を代々継いできた者たちは、長きにわたって、ゼロット山脈の空洞になった山頂にあるアイヴォリーインキュバリウムからのみオラクルを受け入れてきた。胚が受胎するときに頭金が支払われ、成長して熟練の予言者となったオラクルがグレイブン王の居城へ派遣されたときに残りの代金が支払われる契約だった。

オラクルを受胎し産むのはパリド・シビルたちで、そこで育ち認められたオラクルは、その肉体により我々の共有するこの世界につなぎ留められている。一方、彼らの魂は遠く離れた場所をさまよい、ほとんど実体のない臍帯が辛うじて魂をつなぎ留めているだけである。宇宙の逍遥から戻ったオラクルは、実体のある舌にのせて炎の言葉を語る。彼らの謎めいた言葉を解析するのはシムリの顧問たちだ。彼らは宮廷か戦場かを問わず、未来や外交に関する助言、あらゆる戦役で勝利するためにグレイブン王が必要とする超自然的な交戦手段などをオラクルの言葉に見出す。これを何世代にもわたって続けることで、グレイブン王家の書には勝利を収めた数々の王の名や、彼らが獲得した領地があふれんばかりに記録されることとなった。長く続いた王とオラクルの関係だったが、ネリフという名のオラクルがこれを変える。ネリフが仕えた王は、最後の王となったのだった。

当初から、ネリフの予言は風変わりだった。それは未来を予見するだけでなく、未来を形作るものだった。風変わりなネリフは誰にも聞かれていない助言をし、シムリは突然、新しい敵との争いに巻き込まれる事態になった。自らの力に対する脅威と感じた顧問たちは、望まれざる事態の責任を当代のオラクルに押し付けた。彼らはオラクルの解任を要求し、シビルに欠陥品のオラクルの回収と有用な後任の提供を求めた。しかし、ネリフがインキュバリウムの破壊という不吉な夢を見たと述べると、数時間のうちに、この古い教育施設が大規模な雪崩で壊滅したという知らせが入った。パリド・シビルと同じ運命をたどることを恐れた顧問たちは、各々の執務室に引きこもり、オラクルに気づかれるのを避けるようになった。

しかし、グレイブン王は現実的な人物だった。彼は慎重すぎる顧問たちの献身を疑う。この貴重な力を持つオラクルを、領地の拡大に利用しない手はないと考えたのだ。王は弱腰の顧問たちを降格させ、ネリフを傍らに置くようになった。ネリフの才能をぼんやりとしか理解しないまま、王は自分の望みを言葉にし、ネリフがその言葉を予言として口にするよう仕向けた。

はじめは、すべてがうまくいっていた。最後のグレイブン王は、運命の寵児を我が物とし、運命そのものをおもちゃ同然に扱えるのだと得意げに語った。王はあの夜のことを警鐘ととらえるべきだったのに。それは、欲深き総督の領地への侵攻前夜のことだ。王はオラクルに勝利を予言させようとした。しかし、ネリフの口から出たのは「どちらにでも転びうる」という言葉だった。勝利を確実にするような言葉は、ついにネリフからは発せられなかった。しかしそれでも、王は自軍を信じていた。総督の領地は内陸にあり、武器は乏しく、味方からの救援が期待できる道もなかった。「どちらにでも転びうる」とは、戦術上の利が王にあるので、計画の危険度は低いという意味だろうと王は解釈した。

もちろん我々は、グレイブン王がその言葉をもっと字義どおりにとるべきだったと知っている。戦役に関する注釈付き年鑑を念入りに調べても、総督の宮殿を目前にした戦場で起きたことは想像の域を超えている。どうやら、虐殺の場となったその戦場は二つに割れたらしい。転換点が訪れるたびに、現実が割れ、かけらになった。よろめき戦場に倒れた兵士たちは、確かな足取りでそこに立ち、前進して戦いに身を投じた。体だけでなく兵士の精神も同じだった。彼らは死に、生きていた。存在し、非存在だった。勝利と敗北が分割され、どちらの軍にとっても両方の状態が存在した。宇宙は合わせ鏡の広間となり、どの鏡も限りなく粉砕された。

両軍は同時に狂気に陥った。勝利し敗北したという状態を理解できず、グレイブン王の精神は狂気の塵となって散逸した。何も知らない総督も同じようなものだった。正反対の世界は分裂を続け、無限の歴史を繰り返した。そこに住む人々は食べることも服を着ることもできず、自らの身を守ることも、従来の方法で生殖することもなかった。

しかし、反動が起こる前にシムリの慎重な顧問たちがネリフを捕らえた。彼らはネリフを縛り付けてさるぐつわをかませ、彼が自分たちに害を及ぼすことのない場所に着くことを願って、次元を超える船に乗せて高速で世界の外へ送り出した。もちろん、そんなことをしても手遅れだった。きっと、我々にとっても手遅れなのだろう。" "npc_dota_hero_techies_bio" "ドレッジャー湾の歴史物語群の中で、テッキーズ・デモリションほど悪しざまに語られるものもない。とはいえ、ドレッジャー湾はすでに存在しない。それはトーテリンもトラッパータウンも同じだ。そもそも、テッキーズ・デモリションの歴史を追ってみれば、彼らが現れた町は間もなく消滅してしまうことがわかるだろう。

テッキーズにまつわる避けられない惨事はどれもそうであるように、ドレッジャー湾の消滅も発明から始まった。街の地下にある採掘場で安全に使える爆発物の設計を依頼され、燃焼物の天才、スクィー、スプリーン、スプーンの3人は誰も見たことのない装置を作り出した。ボタンだ。押せば離れた場所にある仕掛けの導火線に火が付くものだった。

この発明品を早く試してみたい3人は、いくつもの樽に爆発塩を詰めて発明した遠隔爆弾と共に、狭い作業場の四隅に積み上げた。そしてその中から樽を一つ抜き出すと、遠く離れた畑に埋めたのだった。3人が溝に身を隠すと、スプリーンが起爆ボタンを押した。少し待ったが何も起きない。困惑したスプリーンは立ち上がり、ボタンをもう一度、もう二度と押し続けた。突然、畑が爆発し、穴が開く。興奮したスクィーとスプリーンが家に向かうと、轟音と爆風が彼らを吹き飛ばした。

予期せぬ轟音のせいで耳鳴りがする中、戸惑った3人は土埃に身を寄せ合い、作業場ががれきの山と化したのに気づく。木や石のかけらがなおも頭上から落ちてくるその下では、大きな穴がゆっくりと沈み込み、大きな穴になっていた。ドレッジャー湾全体ががたがたと揺れ、地下の採掘場に落ちようとしている。住人はパニックになって散り散りに逃げていった。

沈みゆく家の縁に腰かけ、3人はニヤリと、次第に声を上げて笑い始めた。かつての隣人たちの冷たい眼差しなど気にも留めず、目の前の可能性にすっかり浮かれていたのだ。考えていたのはただ一つ。もっと大きな爆発を起こすにはどうすればよいだろう?" "npc_dota_hero_winter_wyvern_bio" "多くの偉大な詩人と同じく、アウロスはただ執筆の時間のみを欲していた。しかしウィンターワイバーンの生涯には妨害が絶えなかった。エルドヴルム叙事詩は多彩な面々によって書き継がれてきたが、今いるドラゴン学者はかつてほどの作品を残さないと危惧する者もいる。最後の繁栄期以降、エルドヴルム・エッダに追加された物語は少ないのだ。アウロスは嘆いて言う。「生には敵を倒すことや支配すること以上のものがあることを、我々は忘れている。創造力の表出を追い求めて生きるべきなのだ」と。彼女は取材旅行やインスピレーションを得るための本の収集に投資したが、取材はひどい妨害を受け、執筆の時間は少なかった。自分の住まいに隠れてエッダに加筆するべきなのは分かっていたが、強敵との劇的な戦いに引き込まれていた。城に残された宝をあさり、古い書庫に押し入り… その過程でたまたま栄光をつかんだとしても、それは研究の副産物でしかないとアウロスは自分に言い聞かせた。実際のところ、戦場での彼女のスキルと力は大いに高まる一方、学問の面での苦労が文学として称賛されるには至っていない。しかし、英雄譚の主人公になることがアウロスの望みではない。彼女は英雄譚を創作したいのだ。" "npc_dota_hero_arc_warden_bio" "すべてが始まる前、そこには存在があった。それは無限で荘厳な原始の精神であり、測り知れない目的を持っていた。宇宙が轟きと共に生じたとき、この精神は砕け、散り散りになった。後にラディアントとダイアと名乗るようになった二つの大きなかけらは、対立する存在として封ぜられ、あらゆる創造物をその対立に巻き込もうと歪めるようになった。

戦争と大変動が生まれたばかりの宇宙を脅かすようになり、三つめのかけらが姿を現した。ゼットと名乗るその精神のかけらは、不調和を解決しすべてを完全な調和に戻そうとした。自分とおなじかけらたちの闘争心に愕然としたゼットはすべての力を振り絞る。突然、閃光があたりを包み、ゼットはラディアントとダイアを凌駕した。そして対立するかけらをまとめて天体に変えると暗闇に投げ入れ、平和になった星の周回軌道にのせた。世界には調和が戻り、ゼットにはほんのわずかの力だけが残された。弱ってしまった力を監獄に向け、時が終わるまでゼットは隙のない監視者として勤めることにした。それから膨大な時が流れたが、この監視者は今もそこにいる。

地上の世界には生命があふれ、淡い光を放つ衛星に幽閉されている脅威も、その幽閉を続けるためのゼットの苦労も知られていない。ラディアントとダイアが監獄でいつまでも衝突を続けるうちに、衛星の表面は震え、ひびが入り始めた。結局、ほとんど失われたゼットの力ではひび割れを止められず、ついに衛星は割れて粉々になってしまう。監獄の古き住人達は再び対立の種を蒔こうと、飛び出した。

監獄の爆発によりかなたへ吹き飛ばされたゼットは、調和することのないラディアントとダイアのエネルギーによって変身させられる。その姿も思考も一つの状態にはとどまらずバラバラになり、はかない意識の弧につながれることとなった。自身の分裂を抑えられず、ゼットは対立を始めたラディアントとダイアのもとに駆け寄ると、散り散りになった思考をなんとかかき集めて一つの結論を出した。砕けた原始の精神を再び結合せねばならない。あるいは、対立がさらに広がらないよう、すべてを破壊するしかない…" "npc_dota_hero_monkey_king_bio" "500年の間、その山は彼の上にのしかかっていた。石の牢獄である山の重みから自由なのは頭だけだ。古老の神々が彼の幼稚な反抗を止めるためにそうしたものだった。山に覆われていない顔の周りには苔が、耳からはふさふさとした草が生えていた。頬の周りにある野草のおかげで、彼の視界は花に縁取られていた。彼はとっくに死んだと考える者も多かった。天に戦を仕掛けたとして神々が彼を拷問にかけたからだ。しかし、伝説は消えなかった。物語にあるとおり、モンキーキングは死ねないのだ。

そこで、彼は待った。神々が免罪の機会を与えてくれるまで、耐えた。ついに彼らがその対価を伝えに来た時、孫悟空はそれを受け入れた。神々が求めたのは、若い僧侶のひそかな巡礼に同行することだった。道中、悪鬼や危険から僧侶を護り、手に入れたがっている者の多い宝を持つ彼を無事に送り届けよ、と言うのだ。これを成し遂げ、尊い使命を帯びた僧侶の命令に慎ましく従えば、改心したと認められることになった。

以前とはうって変わって、孫悟空は神々への誓いを面目にかけて守り、反乱の罪を償った。苦難の中で多くを学んだ若き僧侶は、宝とともに所属する寺院に戻ったのだった。刑罰の神々と初めて適切な関係になれた孫悟空は、冒険と栄光ばかりを追い求める過去の自分と決別したかに見えた… が、それも短い間だった。モンキーキングは生来のいたずら好きだ。神々への反抗に飽きることはない。" "npc_dota_hero_dark_willow_bio" "子どもは妖精たちの風変わりな冒険物語が大好きだ。それは無知の成せる業である。子どもたちは、妖精の多くが意地の悪い嫌な奴だと知らない。そんな妖精の世界でも、屈指の嫌われ者がミレスカ・サンブリーズだ。

フェイの大商人の子として生まれたミレスカはレヴテルで育った。偽計や殺人が日常の恐ろしい国である。ミレスカは生活の隅々まで浸透しているそこでのしきたりや不文律、世間の儀礼に精通していたが、それらはすべて退屈なものだとも思っていた。

そこで、ミレスカは反抗的な子どもらしいことをした。家を燃やし、飼いウィスプのジェックスと共に故郷を出たのだ。これからは、流浪のペテン師として生きるつもりだ。" "npc_dota_hero_pangolier_bio" "ナイヴァン・ギャラントの構成員は男であれ女であれ、剣術とどんちゃん騒ぎ、安っぽいロマンスの人生を送る。彼らは皆、「冒険の人生だけが生きる価値のある人生である」という信条に従っているが、ドンテ・パンリンの偉業だけは今も享楽志向の強い剣士たちさえも驚かせる語り草となっている。

ドンテに倒せないモンスターはいない。口説けない生き物もいない。ドンテが反抗しない暴君はいない。言い負かせない貴族もいないのだ。" "npc_dota_hero_grimstroke_bio" "アシュカヴォーの人々は寺院の広場を取り囲むように集まっていた。街の新しい守護者が即位するのを見物するためだ。人々はその男のそばに立ち、自分たちの魂が彼の魂と絆で結ばれるのを見守った。しかし、彼が最後の一筆をルーン石に下ろし、新しい守護者が作り出されたとき、街の人々は皆――家に留まっていた者たちでさえ――何か異常なことが起きたと感じとったのだった。

彼はその原因を即座に理解した。墨壺の性能を高めるために自ら調達した霊液を混ぜたことで、逆に墨壺が汚染されてしまったのだ。唱えた結絆呪文が彼を吞み込もうとしていた。墨の汚れがルーン石からうねうねと上り、筆の軸を伝って彼の手に到達した。手から体へと墨は素早く広がっていく。顔と口に達したとき、彼は叫び声をあげることすらできなくなってしまった。

師によって提示された限界よりも大きな力を得るため、彼は生涯を計画に捧げてきた。それは墨の強化という禁術を用いるまでになっていたのだ。即位の絆によって力の源泉を得た彼は、想像もしなかったほどの力が魂に流れ込んでくるのを感じた。これを生き延びれば、最大の偉業を成し遂げられるはずだ。

絆の力を奥深くから引き出し、彼は汚れた墨の流れを押し返した。大きなうめき声が響きわたる。街の人々が上げている声だった。足取りのおぼつかない者もいれば、へたり込む弱い者もいた。多くの住人が逃げ出そうとした。彼はさらに奥深くから街の人々の血の流れを引き出した。それでも、墨を止めるには至らなかった。

肺に裏切られて呼吸が止まり、暗い墨に呑み込まれたとき、突破口が見えた。アシュカヴォーの人々と結ばれた絆は、彼らを護る場合にのみ引き出せるのだ… その力は二手に分かれて流れ出た。

最後の力を引き出した時――やみくもにではなかった――、彼は墨の流れを絆の中に押し入れた。

流れはゆっくりと引いていった… と同時に、街の人々のむせび泣く声が聞こえた。墨の汚れが彼らの方に流れ込んでいた。やがて墨の活動が緩んだ時、彼の目に映る世界はまるで違っていた。見知ったアシュカヴォーの人々はもういない。彼らの魂は一つ残らず、元の姿の暗い部分を映し出したものに変わっていた。それは血も骨もない、ねばつく汚れた墨の姿だった。" "npc_dota_hero_mars_bio" "天の最初の子マルスは長い時間を終わりなき戦に費やし、彼の名を掲げる戦旗に集う無数の戦団を見てきた。征服と復讐の戦い。公正と不正… そこに慈悲はない。父と同じく、マルスも卑しい衝動にその身を任せた。その衝動はゼウスのそれよりもさらに非道で、言語に絶するほどの苦痛を撒いた。

しかしいくつもの時代が流れるにつれ、ゼウスの身勝手なやり方――他の神々から見下げ果てられたやり方――は、むなしく思えるようになった。ただ闘争だけを目的とする戦では、彼の欲望は満たせなくなっていた。無限の日々の中で初めて、軍神は自分の輝かしい槍を何のために振るべきか自問した。

運命の女神の思し召しと言うべきか、その疑問の答えはすぐに分かった。もっと大きな目的のために戦をすべきなのだ。彼の紋章が見えた時に、単なる凶行や悲痛以上のものを思い起こさせるようにしなければならない。生まれながらに持つ統率者の地位を今こそ手にすべき時だ。古い時代のパンテオンを焼き払い、灰になった神々の上に新しい帝国を築くのだ。その時こそマルスは満たされ、その栄光を皆に誇示できるだろう。" "npc_dota_hero_void_spirit_bio" "他の精霊たちでさえ、最長老の精霊であるヴォイドスピリット、イナイの心と陰謀を理解しているとは言わない。人間ならば心をうち砕かれてしまうような秘密を知るヴォイドスピリットは、測り知れない視座から宇宙の動きを観察し、手入れの行き届いたしもべに自分の命令を実行させている。隠れ寺院から出て物質界に姿を現すのは、彼自身でないと世界を適切な道に進ませることができないと判断したときだけだ。

実存というものに対して広い視野を持つイナイは、自分の監視が及ばなくなる、ある時点にもっぱら心を傾けている。それは複数の世界が衝突する運命にある時点だ。彼は今、天を離れて古き戦いをその手で終わらせ、今後来るであろう大きな戦いのために味方の準備を整えさせようとしている。" "npc_dota_hero_snapfire_bio" "ベアトリクス・スナップファイアとそのガマドラゴン、モーティマーは、雨に見放されたナナラクに生きている。アウトランドの入り口であるナナラクには砂漠が広がりオアシスが点在する。そこで命を落としそうな者たちにとっては、ベアトリクスたちの姿は幸いなのだ。

武器職人としての無類の腕に劣らず、知恵や笑い、他ではお目にかかれない特製クッキーでも知られる彼女は、よく働く頭とさらによく働く銃を駆使して、若々しい情熱のまま、この年まで生きてきた。

実際、アウトランドには彼女の小柄な体格と親切心を利用しようとした野党やならず者たちの骨が散らばっているのだ。" "npc_dota_hero_hoodwink_bio" "フードウィンクは幼いころを、クリムウォールの外縁に広がる、緑豊かな風景の中で過ごした。しかし、王国が力をつけ、王国の民と軍が貪欲になるにつれ、鉱山主や材木商同士の対立は深まった。彼らが互いに競い合った結果、国境の森の美しさは食い物にされ、変わりゆく国の欲求を満たすために失われていくことになった。

古い森に住む者たちにとって、選択肢はいくつかあった。難民の列につらなって非武装地帯に行くか、故郷を護りながらクリムウォールの火薬と剣に屈するか、北へ行って霧の森トモカンの恐ろしい峡谷と木立に入り、運命を試すか、だ。

こうして、フードウィンクは北にある得体の知れない霧の森で大人になった。自分を食べようとするトモカンの恐ろしい獣どもを避け、森の盗賊に取り入る一方で他の賊と敵対し、おもしろいいたずらが起きればそれをなんとしてでも妨害するのが彼女の生き方だった。とはいえ、いたずらについては彼女が発端であることも多かったのだが。

しかし、クリムウォールの戦火がかすかな煙となってこの新しい故郷に届いたとき、フードウィンクの脳裏に浮かんだのは侵略を生き延びたかもしれない家族や友のことだった。彼らは破壊された土地でなんとか生きるしかなく、その傷を思うとフードウィンクの魂までも傷を負う思いだった。彼女はどうしても、文明社会のはずれに近づき、昔の生活を破壊した悪魔を一目見ずにはいられなかった。

そこで目にしたのは、幼いころ怪物だと思っていた相手が実はそうではなかったことだ。彼らは… 人間だった。兵士、作業員、商人… それに、難民。兵士たちは火薬や剣を持ってはいたが、トモカンで相手にしている敵――触手や牙のある本物の脅威――に比べれば、なんでもなかった。楓の種のようにくるくると舞ってやり過ごした相手に比べれば。

賢い動物たちが足を踏み入れようとしないトモカンの茂みの中に、自分ならいつでも安全な道を見つけられると知っていたフードウィンクは、荒野をさらに平定しようとする者たちに立ち向かう。彼らの持ち物から欲しいものを奪い、利用できないものは壊す。そして、生き延びた仲間たちが再び緑の風景で暮らすために手を貸している。" "npc_dota_hero_dawnbreaker_bio" "番人が姿を消し光の時代が生まれてからはるかな時が流れ、最初の太陽の系統に連なる者から、祖先の創造主が残した混沌に立ち向かう者たちが現れた。彼らは「光の子」と名乗る結社で、空位となっている番人の座を継ぐのは自分たち以外にいないと考えていた。また、誉れ高き軍を組織して、原始の夜のあらゆる生物を宇宙から追放し、闇の猛威を退けたいと願っていた。

ドーンブレイカーのヴァローラは「光の子」が過去に作り出した中でもっとも大切な戦士であり、結社と光の威厳を伝える輝かしい使者を務めている。生まれて間もない金属星の核から作られ、黄金の息吹によって新しい生命を吹き込まれたヴァローラは、「光の子」の知恵を宇宙のもっとも暗い場所まで広めるという使命を負っていた。終わりなき戦の中でセレスティアルハンマーを振って天界に火をつけ、混沌を追い詰めるのが彼女の役目だった。

時が経ち、結社はヴァローラにもう一つの使命を明かした。彼らは内なる光をもって宇宙の完全性を広め、あらゆる闇の様相を永遠に消す方法を発見したのだった。結社は大いなる力の源を奪うためにヴァローラを送り出す。それは究極の計画を完成させる最後のピースになるはずだった。しかしヴァローラとそのハンマーは初めて失敗を経験し、彼女と結社はとてつもなく大きい代償を強いられた。「光の子」の輝きは完全に失われ、ヴァローラは暗い闇を漂流することになった。数え切れぬ月日をそこで過ごした彼女は、やがて見知らぬ星に墜落する。

その星に落ち着き、休眠状態だったヴァローラだが、若い浮遊星が古いエネルギー精製所の動力となったことで、状況は変わる。精製所はヴァローラと同じく「光の子」の遺物で、吹き荒れる赤い荒野の下に長年埋もれていたのだった。精製所によってかつての力を幾分か取り戻した彼女は、戦と混沌の厳しい力にまみれた世界で目を覚ます。自分の神々がもういないことは分かっていたが、ドーンブレーカーのハンマーはまだその手にあった。その重みに匹敵するのは、善と光の名のもとに公正に武器を振るいたいという彼女の意志だけだ。" "npc_dota_hero_marci_bio" "大勢から慕われるマーシーの出自を知るのは数少ない名もなき者たちだけだ。彼女はミラーナ姫に付き従って旅をすることが多いが、この二人の友情の始まりは、不必要に明らかにされることのない秘密に関係している。味方にとって、マーシーは剛腕で頼れる仲間である。敵にとっては、彼女の味方を傷つけようとする者に容赦ない妨害を加える相手である。浅はかな者であれば彼女の体格から取るに足らない相手だと判断するだろうが、マーシーは途方もない腕力を発揮する能力を内に秘めている。彼女の力を試してやろうという輩は撃退されるだろうが、彼女に認められれば、頼もしいことこの上ない生涯の仲間を得ることになる。" "npc_dota_hero_primal_beast_bio" "霧の森が荒廃し、その牧歌的な景色が死にまみれた紛争地になるまでの過程には、長期にわたる魔術師の関与があった。だが終焉の始まりはプライマルビーストが次元を越えてやってきた時だっという点は、多くの学者が口をそろえるところである。

空腹と痛み以外の感覚を持たないその怪物は、果てしない殺戮の時を過ごし、凶暴な獣だらけの星で食物連鎖の頂点に立った。プライマルビーストを支配下に置こうとした者たちはその希望が潰えたとみるや、なりふり構わず彼を追放した。こうして、プライマルビーストは新しい世界に降り立った。そこは腹をすかせた一介の捕食者から、何者も前に立つことを許さない殺戮機械に上り詰められる… そんな世界だった。

何千年もの間、霧の森は彼が破壊を楽しむための広大な遊び場だった。恐れられるデュラナたちでさえも、そこではプライマルビーストのおやつになった。ビーストの縄張りには対抗できる者がおらず、わずかに苛立たせる程度の存在しかいなかった。しかし、そのような小者が、ある日卑劣な策略によってビーストをグレイプニルで捕らえたのだった。

そこで彼は永遠に囚われの身になるかと思われたが、コンティニュアム装置が予想外の力を出したことで、難を逃れた。グレイプニルとコンティニュアムボールトから解き放たれたプライマルビーストは、霧の森から遠く離れて人間の住む場所に近づいた。新しい殺戮と無秩序な破壊のにおいを、彼は嗅ぎとっていた。お粗末な文明の火では、永遠の時を生きるこの獣を遠ざけておくことはできないだろう。" "npc_dota_hero_muerta_bio" "ムエルタにまつわる逸話はゴームのキャリオン墓地にある墓の数だけある。若い農婦が生き返り、家族を殺した強盗に復讐するという子ども向けの話や、酒場の暗がりで話される誘拐や幻の殺人者ギルドの陰謀論などがそれだ。

どの話にも共通するのは、自分を殺した者への憎悪に吞まれた女性が出てくることで、彼女は死ぬのを拒んだのだという。死神はこの女性を駆り立てる憎悪に感心し、マーシーとグレイスという名の不思議な対の拳銃を与えた。そして、彼女を副官として迎え入れた。彼女の今の役目は、砂時計の最後の一粒が落ちてしまったのに言うことを聞かない魂たちを追い、泣きわめいて抵抗する彼らを永遠の報いへと引きずっていくことだ。" "npc_dota_hero_ringmaster_bio" "ようこそお越しくださいました――華やかに照らされたこのステージへ! 年齢を問わずお楽しみいただけますが、五感は砕け散ることでしょう! 期待は打ち砕かれ、エンシェントは粉砕されることでしょう!

二つとないぜんまい仕掛けの驚異、グレート・コリオストロ・ケトル――通称リングマスター――は拷問の芸術家であり、当代きっての天才だ。彼の離れわざと豪勇を目の当たりにしよう。カーニバルの真っ赤なカーテンの中を覗き、そこで待つ謎を確かめる勇気を持つヒーローのために、リングマスターは純粋な苦悩と見世物を用意している。

偉大な芸術家ににありがちな間違いは、人々が自分のもとへやって来るのを待っていることだ。リングマスターは知っている。外へ出て、観客を見つける必要があることを! 彼らを引きずって連れてこなければならない。そして、見せつけるのだ。" "npc_dota_hero_kez_bio" "「俺は根っからの賞金首だ。厄介事を起こす腕が上がるにつれ、賞金額も上がった。インペリア女王が賞金額を上げるたび、俺のしたことは正しかったんだと確信したものだ。アイスラックを長く留守にしていたことの代償がそこだな… 俺にかかっている賞金を、恥ずかしくないくらいの額に戻さないと」" } }